[届いた手紙]
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「つ・き・は・お・ま・え・た」
「『次はお前だ』って言ってる!」
10円は3回ほど「つきはおまえた」と動いてから、今度は小さく
ぐるぐると回りだしました。
「お願いです!お戻り下さいっ!」
みんなの顔色が真っ青になっていました。今思うと、よくそんなことが
できたと思いますが、ぐるぐる回って止まらなくなった時、私はとっさに
10円を紙の上から払い飛ばしました。「はうっ」というような声を上げて
3人が顔を上げました。
「…なんて事するのよ。鳥居に戻ってないのに…」
大谷さんが言いましたが、私も言い返しました。
「何言ってんの、あのまま続けてたら、どうなってたかわかんないじゃない!」
結局、それでコックリさんは終わりました。
私たちは次の日の朝、別れました。別にけんかしたわけではなかったのですが、
何か、気まずい感じでした。
それでも、みんなで撮った写真などを送るためおたがいのアドレスや携帯番号
はメモっておきました。
私たち4人が体験した事は、これだけです。
オカルト好きの福島の大谷さんが死んだのを知ったのは、偶然でした。
旅行から帰ってきて2週間ぐらいした頃、家の古新聞を束ねていた時、
その記事に気が付きました。
ミニバイクに乗っていて、左折してきたトレーラーに巻き込まれたという
事でした。即死だったそうです。日付は3日前でした。
あの時のコックリさんの言葉、「つきはおまえた」が頭に浮かびました。
やはり、次に死ぬのはお前だという意味だったのでしょうか。
それから注意してニュースや新聞を見るようにしましたが、覚えのある名前は
見かけませんでした。福島の大谷さんには悪いのですが、私はほっとしていました。
やはり偶然なんだ…そう思いました。
和歌山の相沢さんから電話がかかってきたのはそんな時でした。
「長野の立野さんが死んじゃった!」
いきなり相沢さんは言いました。
「どうして!」私の声は悲鳴のようでした。
「いつ?なんで死んだの?事故?」
「さきおととい!心臓マヒで!きのう立野さんの家に電話したらお母さんが出て
夕方急に胸が苦しいって言って、救急車で病院に行ったけど、だめだったって。
やっぱりコックリさんのたたりなんだ!」
「何でそうなるのよ!偶然かも知れないじゃない!」
「だって福島の大谷さんも死んだじゃない!」
私は一瞬、絶句しました。
「…知ってたの?」
「長野の立野さんから電話かかってきたの。死ぬ2日くらい前。福島の大谷さん
の次は私かも知れないって。立野さんは、福島の大谷さんから『私もうすぐ死ぬ
かもしれない』っていう電話を受けたんだって」
「どうして1人死んだら次が死なないといけないのよ!自殺ならともかく、
事故とか病気でしょ?偶然よ!」
正直に言うと、そういう私自身、とても偶然だとは思えませんでした。
「…信じないのね」
相沢さんは言いました。
「信じないなら、みんなで写ってる写真、見てみなさいよ!」
そう言って、相沢さんは電話を切ってしまいました。
写真というのは、白糸の滝で、人に写してもらって4人で写っている写真の事です。
私は机の引き出しに入っているその写真を出しました。
見た瞬間、私は気を失いました。
写真には和歌山の相沢さんと私しか写っていませんでした。
福島の大谷さんと長野の立野さんが立っていた所は、ぽっかりとあいていました。
2人は写真から消えていました。
和歌山の相沢さんが死んだのは、電話の3日後でした。
中島様もニュースで見られたかも知れませんが、殺されたのです。
犯人は相沢さんと何の関係もない人で、通り魔殺人でした。
覚醒剤中毒で、錯乱状態だったという事です。
和歌山市内の繁華街で、わけのわからない事を叫びながら暴れまわり、たまたま
そこにいた相沢さんを、持っていた刺身包丁で刺したんです。
犯人は相沢さんを刺す時、こう叫んだそうです。
「次はお前だ!」
あの時の4人で生きているのは、もう私だけになりました。
白糸の滝の写真には、私が1人ではしっこに立っています。
人が見たら、へたくそな写真だなと思うでしょう。
さっきから、1行書いてはぼーっとしています。
ちょっと気持ち悪いんですが、ぼーっとしている時、いつの間にかカッターナイフ
を手に持っています。
カッターの刃をカチカチ出したりしながら、今私が死んだらノイローゼのせいだと
みんな思うだろうなぁ、と考えたりします。
もちろん自殺するつもりなんてありませんけど。
もし私が死んだら、それで終わるんでしょうか。
それとも、今度は別の誰かが死ぬ事にな
つ ぎ は お ま え だ(血文字?&赤い手形