[川沿いの家]

前ページ
きっかけは何だったか忘れたが、ふと話題が、あの夏の日のことになった。
「あの話、怖かったよね〜。まだイトコ達になんも起こってないから良かったけど」
「ホンマに。未だにあの話は忘れられんわ」
頷く兄に、私はもう言ってもいいかなと思って兄に言うことにした。
光の玉の話だ。
なぜか、そのことは誰にも言っちゃ駄目だと思いこみ、今まで誰にも言わずにいたのだった。
「そういえばさあ、私、あの日見ちゃったんよ」
わざとちゃかしながら、そう切り出す
「火の玉……というより、光の玉? みたいなやつ。しかも火事になったいう、あの家んトコで見たんだよね」
私の言葉を聞いて、兄はぎょっとした目で私を見た。
「俺も」
「え?」
「俺も見た! 変な光の玉。ふよふよ浮いとった!」
今度は、私が驚く番だった。もしかしたら気のせいだと思っていたあの光の玉を、兄も見ていたのだ。
ぞーっとし、暗黙の了解でその話題はそこでとぎれた。その日私は眠れなかった。

その数ヶ月後、兄が死んだ。
とある事故だった。書いてしまうと身バレする可能性があるのでやめておく。
ちょっと普通では考えられない、特守な事故だった。ニュースにもなった。

次の年、父方の祖父が死に、後を追うように祖母と叔父が亡くなった。
三人とも、同じ病気でだった。(もちろん、感染症や伝染病ではありません)
あまり聞いたことのない病名で、お医者さんも変な偶然に首をひねっていたそうだ。
もともと母親が居ないイトコの家は、イトコ兄弟だけになってしまった。

叔父の通夜の前の夜、叔父の遺体が収まった棺桶の隣で、イトコの兄ちゃんと姉ちゃん、三人で飲んだ。
二人とも、この家を出るのだと言った。
「やっぱり……、怖いから。信じてる訳じゃないんやけど……」

――あまりお酒が強くない私は、酒をさまそうと二人に断って外に出た。
ぼんやりと庭を散歩し、裏庭に行く。さらさらと、川が流れる音がする。
あのころ、うっそうと茂っていた竹林は、全て切られてなくなっていた。
荒れ地となったその場所に時間の流れを感じながら、ふと振り返る。
イトコの家の目の前に、あのころ見たのと同じような光の玉がふよふよと浮いていた。

なんとなく思う。私は、もうしばらくしたら死ぬかもしれない。
それも、兄と同じような事故で……
そう考えると、怖くてたまりません……

長文失礼しました。


次の話

Part104menu
top