[不可解な自殺]
これは実話ではない。かといって完全なフィクションでもない。
どこまでが事実かは、読む人の想像に任せる。ただ場所や日時を特定することはできない。
伝え聞いた話ではあるが、これを記す本人に、真偽の程が分からないからだ。
ただ、ある女性が亡くなったことは事実らしい。
数年前、一人の女性が鉄道自殺を図った。それは事後処理された後、自殺と断定された。
電車の運転手が目の当たりにしたことや、ホームにいた人たちの証言もあった。
しかし、彼女の家族と、婚約者である彼氏だけはなかなか認めようとしなかった。
彼女は二十代前半で健康に恵まれ、仕事や家族にも何ら問題はなく、前途ある未来が約束されていた。
彼女の死から月日が経ったが、結局、未来を失った彼は取り残された。
彼女との最後の会話に思いをめぐらせ、じりじりと自分の内に後退してしまった。
「これから死ぬって時に、あんな話はしないぞ」
彼は信念をもって事実を究明しようとした。自分だけが知っている真実を、世間に通用させようとした。
もしそれができないのなら、自分自身を失ってしまうと感じていたのかもしれない。
続く