[山中の雪道で]
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下の道で行くことにした僕らは
順調に進んでいった
しかし、次第に車の出入りが少なくなっていく
山道にさし当たった時に
車の異常な動きに気づいた
俺は後方のシートに彼女と座っていたが
どうも車の動きと友達のハンドルの動きが
あっていない
あまりの雪道でタイヤが滑っているのだと思っていた
しかし、尋常じゃないタイヤのすべりに
おかしいなと思った俺は、友達に
「かなりタイヤがすべるね、遅くなってもかまわないから
安全運転でいこーぜ」といった
いつもの彼ならドミノピザのデリバリ風に
「安全運転でいってきまーす」っていうはずが
何も返答はなかった
どうしたんだろうと思った僕と同じように
助手席にいた友達もそう思ったらしく
二人で顔を見合わせてその友達の顔をみた

その友達は今まで付き合ってきた9年間の中で
一度も見せたことのないような怯えた顔をしていた
彼は俺らの返事には答えず
バックミラーを何度も見るばかり
不審に思った助手席の友達は
後ろを振り返ったと同時に
俺もそいつにつられて後ろを振り向いた
そこにいたのは車にしがみついていた
女だった
しがみついているというか
車を止めようとして
車のウィングにしがみつき足で
ブレーキをかけているようだった
「驚いた僕は彼女に後ろを振り向くなよ」といい
運転している友達に
「もっとスピード上げろ!」と叫ぶように言い放った
今まで俺等の言葉には反応していなかった友達が
ふと我に返ったのか
「分かった」と恐怖をこらえ、弱い声で返事をした

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