[監視小屋]
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下着姿の友人は、井戸の側にいました。
そして腰の辺りに手をやってゴソゴソしています。 「なぁんだ、裏で用を足すつもりなのか」と呆れながらカーテンを閉めかけた私は、
ふと奇妙な感覚に囚われてもう一度井戸の方に目を向けて声を上げそうになりました。
ゴソゴソしていたと思っていたのは、腰に縄を巻きつけていたのだと気づきました。
そして今はしゃがみこんで縄の先に大きな石を括りつけています。
私は声も出ませんでした。すると今度は井戸からぬるりと白い手が伸びてきたのです。
手は何かを探るように蠢いて、やがて近くの麻縄を掴みました。 友人は深く頭を垂れて項垂れ、最早何の反応も示しません。
縄を掴んだ手はずるりずるりと石を手繰り寄せていきます。私は夢中で叫んだつもりでしたが、声が出ませんでした。

「あぁ・・Aちゃんが連れていかれる・・っ!!」そう思ったとき、闇を劈いてけたたましく電話のベルが鳴りました。私はその音と同時に、敷いてあった布団に尻餅をつきました。
そのとたんに金縛りのようだった身体がふと軽くなるのを感じ、気がつくと裸足で外へ飛び出して井戸の側の友人のところへ駆け寄りました。放心状態の彼女を何とか小屋まで運び込み、
どれくらい呼びかけていたでしょう。 しばらくすると友人は我に返り、泣き出しました。恐怖から解き放たれた私も一緒になって泣き出しながら、とりあえず誰かに助けを求めようと電話を引っ掴みました。
そのとたん私はしがみついていた友人共々、又しても布団に尻餅をついたんです。
受話器ごと掴んだ電話機はガワだけで、電話線が繋がるどころか中の機械部分が空っぽだったのです。

後から聞いた話によると開校当時、なぜかこの井戸に身を投げて自殺を図る生徒が後を絶たなかったため、埋め立てようと試みたのですが関係者が相次いで亡くなるなどの不幸が続き、
結局は埋め立てを断念。
改築を重ねて井戸が人目につかないようにしたそうです。それでも何処からとも無く身投げをする人が現れるので、それを監視する為に人を置く「監視小屋」が設置されたのですが、
小屋に在駐していた監視役の男性も井戸に身投げを図り、小屋と井戸がそのまま放置される結果になったのだということです。

「カーテンを開けるな」と忠告した電話は、いったいどうやってかかってきたのでしょう?そして彼は、果たしてその監視役の男性その人だったのでしょうか。


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