[転生]
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俺は権さんに「ボディーガードなら俺より他の3人の方が適任だと思いますが」と言った。
しかし、権さんは「いや、あいつらには無理だ。
奴らは確かに腕は立つ。
ルールのあるスポーツなら私もあんたもまず勝てない。
でも、スポーツマンじゃ駄目なんだ。
パン・チョッパリは、土壇場で芯がないから駄目だ。
今回は使えない。殺されるのが落ちだ」と言った。
・・・酷い言い草だな・・・しかしそんなにヤバイのか?
「詳しい話は社長に聞いてくれ。
正直な所、私はこの仕事を下りたいよ。
虎と一緒の檻に入って見張るようなものだ。マトモな奴には無理だよ」
・・・無茶言うな・・・俺はマトモじゃないってか?・・・それも酷いような・・・

数日後、キムさんが帰国した。
そして、更に1週間後、問題の彼と母親のバーク夫人が来日した。

キムさんとバーク夫人の話を総合すると、大まかにはこう言うことだった。

彼がバーク夫妻に引き取られたのは韓国で彼が家族を失ったからだった。
彼は9歳の時に当時3歳の弟を事故で失っている。
その後、両親は離婚し、彼は母親に引き取られた。
11歳の時に父親が火事で死亡し、その後すぐに母親も自殺している。
彼の家は父方は祖父の代で一族から絶縁されており、父親に兄弟は居なかった。
母親には親族が居たが、彼の父親とは族譜上の問題があったらしい。
一族の反対を押し切る形で結婚した為、夫と同じく絶縁されていた。
彼を引き取り養育する者は、バーク氏と結婚して渡米した伯母しか居なかった。
バーク夫妻には子供はなく、彼は夫妻に歓迎された。
バーク家に来た当初、彼は一見普通の少年だった。
しかし、すぐに異変は起こった。

バーク夫妻はビジネスで成功を収めており、夫婦ともに多忙だった。
彼の世話は主にメイド?がしていた。
英語も初歩的な日常会話がやっとのレベルであった彼は学校へは行っておらず、家庭教師がついていたらしい。
彼は放置状態にあった。
そんな中、彼は家庭教師を誘惑し関係を結んでいた。
家庭教師は本来はノーマルだったらしいが、種憲とのホモの関係が夫人に露見し解雇された。
やがて彼は街角に立つようになり、例のビデオ屋に拾われた。
女性ホルモンの注射もビデオ屋の手によるものだった。
彼の保護観察期間終了後、バーク家は世間の目を逃れるようにカナダに移住した。
移住後数年、彼の外見は美しい女性の姿になっていた。
そして、バーク家に破局が訪れた。
彼が義父であるバーク氏を誘惑し関係を結んでいたのが伯母に露見したのだ。

バーク氏はキムさんに「悪魔に魅入られたように、『彼女』の魅力に抵抗できなかった」と語った。
夫人は半狂乱になって種憲を問い詰めた。
彼は何かに取り憑かれたかのように、狂気じみた高笑いをしながら韓国からの経緯を夫妻に話した。
弟の事故死は彼による殺人だった。
高層アパートのベランダから弟を投げ落としたというのだ。
母親と父親の離婚の原因は、彼が父親と関係しているのを母親に見つかったからだった。
母親は、彼の父親が彼を無理やり暴行していたものと思って離婚に踏み切ったが現実は違った。
彼が父親を誘惑し関係を結んだのだ。
離婚後も彼は父のアパートに通い関係を続けた。
ある日、種憲は不眠症となっていた彼の母親の薬を酒に混ぜて父親に飲ませた。
そして、父親が寝付いたのを確認して、石油ストーブを蹴り倒して父親を焼き殺したと言うのだ。

バーク夫妻は彼を沢山の精神科医やカウンセラーに診せた。
話の内容よりも、彼が一瞬垣間見せた、悪魔に憑かれたかのような狂気に恐れを感じて。
あるカウンセラーが退行催眠という手法で治療を施した時、彼の口から思わぬ言葉が出てきた。
「自分は日本のXX県OO市に住んでいた林善太郎の妻、林サチエだ。
夫が雇っていた朝鮮人、姜時憲(カン シホン)にお腹の子と共に殺された。
姜一族を根絶やしにして、夫と子供の恨みを晴らすために転生した」と言うのだ。
バーク夫人は驚愕した。
姜は彼の父親の姓だった。そして、時憲と言う名は確か、彼の祖父の名だと思い当たったのだ。
彼女は韓人コミュニティーの祈祷師を頼ったが、「これは祓えない」と言われてしまった。
何人かの祈祷師・霊媒師を経て、カナダ在住の貿易商経由でキムさんにこの話が伝わった。
キムさんが北米で、マサさんが日本と韓国で動く事になった。

マサさんは、まず韓国で姜家を当った。
問題の種憲の祖父、時憲には兄がいた。
姜相憲(カン サンホン)である。彼は韓国で存命だった。
林善太郎、林幸恵は実在の人物だった。

相憲は日本に出稼ぎに来て、材木商を営んでいた林家に雇われていた。
林家の当主、善太郎は人格者としてその地域で多くの人に慕われていた。

続く