[危険な好奇心]
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それから一週間程、病院に見舞いには行っていなかった。
別に理由は無いが、新学期も始まり、なかなか行く時間が無かったというのもある。
それに『中年女』が更正(?)しているようだったので、心配も、以前ほどはしていなかった。
何かあれば淳から電話があるだろうと思っていた。
そんなある日、淳から電話が掛かってきた。
内容は『来週退院する!』
との事だった。
俺は『良かったな!』と祝福の言葉と共に、『中年女』の動向を聞いたが、
『普通にゴミ回収の仕事をしている。特に何もない。』との事だった。
そして、さらに一週間が経ち、淳は退院した。
俺は学校帰りに淳の家に立ち寄った。
チャイムを押すと、松葉杖をつきながら淳が出てきた。
『おぅ!上がれよ!』
足にはギブスをはめたままだったが、すっかり元気そうだった。
淳の部屋でしばし雑談をした。
夕方になり俺は帰宅し、夕飯を喰った後、慎に電話をした。
『淳、退院したぜ!』
『まぢ!そっか、じゃあ快気祝いしなくちゃな!すぐにでも行きたいけど部活が忙しいから月末頃にそっち行くよ!』
との事だった。
そして月末の土曜日。
俺、慎、淳。。。
小学校以来、久しぶりの三人での再会だった。
昼に駅前のマクドで落ち合った。
久しぶりに会った慎は冬なのに浅黒く日焼けし、少しギャル男気味だった。
まぁ、それはさておき、夕方まで色々と語った。
それぞれの高校の話。
恋の話。
昔の思い出話。。。
もちろん『中年女』の話題も出てきた。
あの時それぞれが何よりも恐ろしく感じていた『中年女』も、今となればゴミ回収のおばさん。
病院での出来事を俺と淳が慎に詳しく話してやると、慎は
『あの頃と違って、今ならアイツが襲って来てもブッ飛ばせるしな!』
と笑いとばした。
もう俺達にとって『中年女』は過去の人物、遠い昔話で、トラウマでも無くなっていた。
夕方になり、俺達はカラオケBOXに行った。
久しぶりの『三人』での再会と言うこともあり、俺達は再会を祝して『酒』を注文した。
まぁ酒と言っても酎ハイだが。。。
当時の俺達は充分に酔えた。
各々、4、5杯ぐらい飲み、皆ほろ酔いだった。
いい気分で歌を歌い、かなりHIGHテンションだった。
そして二時間経ち、歌にも飽き出した時、慎がある提案をした。
『よーし、今から秘密基地に行くぞ!あの時、見捨てちまったハッピーとタッチの供養をしに行くぞ!』と。
一瞬、空気が凍った。
俺も淳も『・・・』と言葉を失った。
まさか、『あの場所』に行こうなんて。。予想外の発言だったから。
慎はそんな俺達を挑発するように
『オメーら変わってねーな!まぢでビビっんの?!ハハッ!』
と、少し悪酔い?していた。
その言葉に酔っ払い淳が反応し、『あ?誰がビビるかよ!喧嘩売ってんのか慎?』とキレ出した。
俺は酔いながらも空気を読み
『おいおい、やめとけって!第一、淳まだ杖突いてんだぜ?』と言うと、慎がすかさず
『あ、そっか、、杖ツイてちゃ逃げれねーしな?ハハハ♪』
と、かなりの悪酔いしていた。
淳は益々ムキになり
『うるせーよ!行きてーんなら行ってやるよ!お前こそ途中でビビんぢゃねーぞ?』
と、まるで子供の喧嘩のようになり、結局、『ハッピーとタッチの冥福を祈りに』と言う名目で行くことになった。
慎、淳は二人とも結構酔っていたのと、引くに引けなかったんだと思う。
まぁ、『ハッピーとタッチの供養』はいずれしなければならないと思っていたので、いい機会かも、、と少し思った。三人なら恐さも薄れるし。。
カラオケBOXを出て、コンビニに寄り、あの2匹が大好きだった
『うまい棒』と『コーラ』
を買い込み、タクシーで一旦俺の家に寄り、照明道具を取って来てから
『小学校の裏山』
へ向かった。
タクシー運転手に怪しげな目で見られつつ、山の入口でタクシーを降りた。
俺は三人でよく遊んだ裏山という懐かしさと共に『あの日』の出来事を思い出した。
こんな夜更けに・・又、入ることになるとは・・・
そんな俺の気持ちも知らずに淳は意気揚々と
『さぁ、入ろうぜ!』
と、杖を突きながらズカズカと入っていく。
その後ろをニヤニヤしながら慎が明かりを燈しながら着いて行った。
俺は
『淳、足元、気つけろよ!』
と言い、慎に続いた。
いざ山に入ると、昔と景色が変わっていることに驚いた。
いや、景色が変わったのでは無く、俺達がデカくなったから景色が変わって見えているのか。。?
登山途中、慎が淳をからかうように
『中年女がいたらどーする?俺、お前置いて逃げるけど♪』
等、冗談ばかり言っていた。(俺は逃げるけど)
思いの外、スムーズに進め、30分程で『あの場所』に到達した。
続く