[危険な好奇心]
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慎が『なんで親が関係あるの?狙われているのは俺達だよ?!』とキレ気味に言い放った。
ちなみに慎の両親は医者と看護婦。高校生の兄貴は某有名私立高校生。
俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、一番厳しい家庭でもある。
『あの夜』親に嘘をついて秘密基地に行き、このような事に巻き込まれた、などバレれば、俺や淳もだが、慎が一番洒落にならないのである。
『助けてよ!警察官でしょ!!』と慎が詰め寄る。
警官は少し苦笑いして、『君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事はキチンと親に言わなきゃダメだよ。』
と、しばらくイタチゴッコが続いた。
あげくに警官は『じゃあ君達の担任の先生は何て名前?』
など、俺達にとっては《脅し》に取れる言葉を投げ掛けてきた。
まぁ、警官にとっては俺達の『保護者及び責任者』から話を聞かないと・・・って感じだったのだろうが、
俺達にとって、こういう時の『親・先生』は怒られる対象にしか考えられなかった。
そうこうしているうちに俺達の心の中に、目の前にいる
警官に対して《不信感》が芽生えてきた。
[このまま此処にいれば、無理矢理住所を言わされ、親にチクられる!]と。
(この警官は俺達の話を信じてくれてないのでは?)
と俺は思い始めた。
俺や慎が必死に助けを求めているのに、『親』『先生』ばかり言ってくる。
俺達は『中年女』の存在を裏付ける証拠写真まで持参しているのに。。
俺はもう一度警官に写真を見せつけ
『犬をこんな殺し方する奴なんだよ!』と言った。
すると、警官はしばらく黙り込み、写真を手に取り、意外な一言を言った。
『ん〜。。これって犬?なの?』
『は?』と俺と慎は驚いた。この人は何を言っているんだろう!と。
続けて警官は
『いや、君達を信じていない訳じゃないよ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?』
警官は冗談を言っている訳では無く、本当に解らないようだ。
俺はハッピーの写真を取上げ
『だから、、、』
と説明しかけて言葉が詰まった。
確かに、この写真を客観的に見ると犬の死骸には見えないかも・・。と思った。
薄茶色に変色した骨に所々わずかに残っている毛。。。
俺と慎はハッピーが死体になった翌日にも見ているので、腐食が進んでいても元の形(倒れていた角度、姿)を知っているが、
知らない奴が見るとただの汚れた石に汚い雑巾の様なものが絡んでいるようにしか見えないかも知れない。。
俺は冷静に他の写真も見てみた。
板に刻まれた『淳呪殺』・少女の写真に無数の『釘』。。
たしかに『中年女』の存在に直接結び付けるのは難しいのか?
ひょっとして警官は『小学生の悪戯』と思っていて、先程から『親・担任』などと言っているのか?
俺はこのまま此処にいては危険だと感じ出した。
『絶対、親を呼び出すつもりだ!』
俺は慎に小さな声で耳打ちした。
慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、『外に出る合図』を送ってきた。
すると次の瞬間には慎は勢いよく振り向き、走りだした。
俺もすぐさま後を追い、交番から抜け出した。
後ろから『おいっ!』と警官が呼び止める声がしたが、俺達は振り向かずに走り続けた。
警官が追い掛けてくる気配は無かった。警官はおそらく
『悪戯しにきた小学生が、嘘を見破られそうになり逃げ出した。』
とでも思っているのだろう。
俺と慎は警官が追って来ていないことを充分に確認し、道端に座り込み、緊急ミーティングを開催した。
続く