[錆びた槍]
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夜釣りを楽しんでるとさ、いとこの一人が俺に言ってきたんだ。
「A(←俺)、何かあっちさ人たってねは?」
あっちって方向を指差したのは海のど真ん中。コの字型の岸壁のど真ん中で
確かに人らしきのが海の上に立ってるの。最初は舟の上で漁師のオサーンが
何かしてるんだろうなって思ったけど、そんな気配はない。つーか、舟がない。
きっと幽霊だと思ってなんか俺らは怖がらずに、逆にテンションあがって
ワイワイやってたんですよ…。アホだ…。

そしたらオサーンとじいちゃんとかが、俺らが釣りしていた岸壁に
かなり飛ばして、俺らの背後にある漁港までの山道を飛ばしてきたのに気づいてさ
俺ら見つかってオサーンとじいちゃんにかなりその後しぼられたんだ。
車の中で「何か見たか?何か見てねぇべ!?」って言われてさ、
俺らはその幽霊らしきのを見たとは言わず、また事実を隠しちゃったの。
そしたら、また大人達が肩をなでおろしたのがマジで印象的だった。

車の中で本家に帰る途中、ずっと大人達は無言だったんだ。俺らはそれに
不思議がったんだけど、俺は勝手に釣りに出かけたら怒ってるんだろうなって
思ってた。家に着くと大慌てで婆ちゃんが俺らんとこに来て
「何も見なかったべな!!何も見なかったべな!!」
ってオサーンと同じ事を言ったのよ。で、まぁ見てないみたいな事を言ったら
婆ちゃんフラフラ〜って崩れ落ちて泣き出した。悪いことしたなぁって反省したんだが
何がそこまで大人達をさせるのかなって気になったんだよね。すぐ後に婆ちゃんが
「くわっせ、うまかっつぉ」
って言ってくれて夕顔の煮たのを出してくれた。郷土料理だよ、美味しいよ。
いつもの婆ちゃんに戻ってたね。さっきのテンパってた婆ちゃんじゃなくて。
だからなおさら気になったんだよね。

夕顔食いながらさ、ふと気になってたから聞いちゃったんだよね。
何か部屋が開くだの閉めるだのみたいなのをこの間話してたでしょ〜みたいな感じで。
そしたらまた空気が変わっちゃってさ、婆ちゃん泣き出す、オサーンはテンパる、
爺ちゃんは電話しだす、オヤジ&おかんはうなだれるみたいな感じにね。
俺らはさすがに怖くなって二人とも泣いちゃった。阿鼻叫喚とはまさにこの事。。。

で、オサーンに別の部屋に連れて行かれてね、盆棚がある部屋なんだけどさ
そこで10分くらい拝まされて、「今日は寝ろは…」って言われたんだけど、
気になって寝れない。まだ婆ちゃん泣いてるし、近所から人来るしさ
寝れるわけねーだろみたいな場だったんですよ。まぁ寝たんだがw


朝起きたら、いつも通りの朝で取り合えず一安心。けど、爺ちゃんは難しそうな顔を
したままだった。起きてソッコーで寺に連れて行かれて、剣舞(←字は合ってるか分からん)
を見せられた。ケンバイっていうのは何か背中に旗さして踊ってるよくわからんもの。
この地域では子ども会みたいなのに入ってるヤツらが踊ってるの。学校の帰りとかに
公民館みたいなところに寄って、夏に踊る為に練習してるんです。俺はやらんかった。
見せられた後に寺の本堂の中に連れて行かれて、坊さんに長々とお経をあげられた。
以降は爺ちゃんとオサーン、坊さんの会話ね。うる覚えだからあれだけどさ…。
あと方言が意味不明だと思うので訳して書きます。爺ちゃんをJ、オサーンをO、坊さんをBとします。

O:「何も見てなかったって言ってました」
B:「だとしたら安心だけど油断は出来ないな」
O:「こっちはこっちで何とか出来るとは思うんですが」
B:「じゃあ、T(本家の屋号)に行くから」
J:「お願いします」

みたいな感じ。もっと沢山話してたんだけど、こんな感じでした。

続く