[山小屋でのバイト]
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「なぁ、床下見てみようぜ」

友人が言った。確かに、プレハブは地面から10cmほど浮いており、床下の四方を
ポールが支えている作りになってるようだった。気になった俺は、友人に同意した。
俺らは外に出た。朝とはいえ、まだ5時ちょっと前で結構薄暗い。友人は持参したミニペンライトで
床下の隙間を照らした。

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「どうした!!」
「腕!!腕腕腕腕、腕がぁぁぁっぁぁ」
「あっ!!」

床下には青白い、無数の切断された腕が、散らばっていた。だが、腕の切断面を
見た瞬間、マネキンの腕だという事がすぐ分かった。ただ、異様なのは全ての
マネキンの腕に、女の顔写真(ポラロイド)と名前がマジックで書いてあった。
全部で50個近くはあったんじゃないだろうか。マネキンであることは、触って間違いなく確認した。

「何だよこれ…普通じゃねーよ…バックれようか?」
「馬鹿、一応金もらうまで待とうよ。それでまた新たに何か言ってくるようであれば、逃げよう」

もう一度プレハブに戻る気にもならず、俺らはボーっと外に立っていた。
あれこれ話している内に7時になり、昨日の初老の男がやってきた。

「お疲れ様。早いね。早速、これバイト代ね…ところで提案があるんだけど、
 あと3日間くらい泊まれないかな?もちろんバイト代は3日分の6万払うけど」
「お断りします」

俺たちはハモるように言い、一目散に歩いた。振り返ると、男が苦々しそうな
顔をして、携帯を耳にあてこっちを睨んでいた。それ以来、バイト雑誌で
その応募記事は見たことがない。おそらく、あのプレハブもないだろう。
帰り道、友人がいった。

「何かの実験だったんだろうね」

俺は軽く頷いて、同意した。


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