[ばりばり]
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「ばりばり・・・?」
意味が分からない。元々字が汚い私であるが、そこに書かれている字はそれに輪をかけて汚く、
ひどく焦って書いたような印象があった。
首をかしげて疑問符を浮かべていると、一番奥の個室から物音がした。
「!!!」
びっくりした。誰もいないと思っていたのに。音は断続的に続いていた。
自然とそっちに耳を傾けると・・・

「ばり・・・ばりばり、ばりっ・・・・ばりばり」

心臓が飛び出るかと思った。ばりばり・・・紙に書いてあったのはこのことだ。
でもこの音源がなんであるのかは全く見当がつかなかった。ただ言えることは、
なにか軽い感じの音ではなく、なんとなく重い感じの音だった。
私は今すぐ逃げ出したい気持ちだったのに、どういうわけか壁をよじ登って上から音源の個室を
覗き見ることにした。もちろん細心の注意を払って音一つたてないようにだ。
私は見た。私の個室からは隣の隣に位置するため、すべて見ることは出来なかったが、
音源が人間であることは分かった。それも女の子だ。黒髪の。おかっぱで。
そう、まるでみんながイメージする”トイレの花子さん”そのまんまだ。

髪の毛が邪魔で何をしているかは分からなかったが、そいつが何やら頭を上下に動かすたびにまたあの「ばり、ばり」という音が響いた。
私は自分でも驚いたが、信じられないほどの勇気をもってさらに身をのりだした。
そこで私は見た。
少女が、人間の生首を頭蓋骨からばりばりと食ってるのを・・・
私は絶叫した! もうなりふりかまっていられない! 殺される!
ドアを蹴破って個室を飛び出した。足がもつれて男性用便器に激突したがそれどころじゃない!
振り向けば一番奥の個室が薄く開きはじめていた。
「やばいやばいやばいやばいやばい!!!」
全力疾走。トイレを出て階段を目指す。母校だけあって校内の地理は完璧だった。

自分がいるのは
地上三階。3段、4段飛ばして階段を駆け下りる。すぐに一階にたどり着いた。
そこで私は異様な光景を見た。
下駄箱には片足の無い少年や、和服姿の女の子、そのほかにも妖怪のような気持ちの悪いやつらが
うようよしていた。
でもそいつらは私を珍しがっていたようだが敵意は無さそうで、すぐに襲い
かかってくるような気配はなかった。私はほっと安心する間もなく、校庭に出る扉に飛びついた。
一つ目の扉にはカギがかかっていて開かなかった。二つ目も三つ目も、
四つ目にもカギがかかっていたのだが、これだけ内カギ?のような仕様で、ひねれば簡単に開く
カギだった。開けるなり、また蹴破るように外に飛び出した。
「やった! 助かった!」
やった、助かった・・・? 自分で言ってなんだか変な感じがした。何で外に出ただけで助かった
なんて言えるのだろうか。
ここにきてやっと私は思い出した。
続く