[さえがみさん]
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家に帰って祖父に知らせたところ、祖父は「それは本当か!」と普段は温和な祖父らしくない形相で聞いてきた
それを聞いた祖母は血の気の引いた顔をしていた
叔父(Sの父親で祖父の子で俺の親父の弟)も心なしか顔色が悪かった
叔母(Sの母親)は何が起こっているのか理解できていない様子だった
祖父は俺から話を聞いてすぐにどこかに電話していた

そのあとはもう大変だった
村の青年団がさえがみさん(道祖神様)の社のある山の入り口に集合して、長老たちが集まって何事か話し合っている
いくら村の決まりごととはいえ子どもが山に入ったくらいでこれはないやろと思ったのを覚えている

そのあとのことだけど、青年団が山の入り口に集まってしばらくした頃にSが何かに追いかけられるかのような必死の形相で山道を駆け下りてきた
それを見た祖父がさえがみさん(道祖神様)のところに供えてあった日本酒と粗塩の袋を引っ掴んで酒と塩を口に含んでから自分の頭から酒と塩をぶっ掛けて、それからSのところに駆け寄ってSにも同じように頭から酒と塩をかけていた
その後でSにも酒と塩を口に含ませていた
酒と塩を口に入れられたSはその場でゲェゲェと吐いていた
Sが吐き出すもの全部吐き出してから祖父がSを連れて戻ってきた
祖父とSが注連縄を潜るときに長老連中が祖父とSに大量の酒と塩をぶちまけるようにぶっかけていた
その後、Sは青年団の団長に連れられてどこかへ連れて行かれた(あとで聞いたところによると隣村の神社だったらしい)

妹のY子だけど、何故か祖父も含めて山に入って探そうとはしなかった
不思議に思って父に聞いたら「今日は日が悪い」と言って首を横に振るだけだった
叔母が半狂乱になって「娘を探して!」と叫んでいたが、悲しそうな諦めの混じったような表情の叔父がそれを宥めていたのが印象に残っている
結局、Y子はそれから4日後に山の中腹にある山の神様の祠で保護された
後で聞いた話ではそのときにはもうY子は精神に異常をきたしていたそうだ
発見された後でY子は何故か病院ではなく、兄と同じく隣村の神社に送られたらしい
このとき、村の長老たちの間で一悶着あったらしいとかなり後になって父から聞いた

後日談だけど、Y子は今でも隣村の神社にいるらしい
表向きは住み込みで巫女をしているということになっているけど、実際は精神の異常が治らずに座敷牢みたいなところで監禁に近い生活を送っているそうだ
このことは一族内でもタブーとされていてこれ以上詳しいことは聞き出せないんだ、すまん
監禁の件は親父を酒に酔わせてやっと聞き出せたくらいだし

Sの方だが、彼は一時期は強いショックを受けていて錯乱気味だったけど、その後は心身ともに異常はなく普通に生活を送っていたそうだ
あの事件以降は叔父一家は帰省しなくなったので俺が直接Sに会うことはそれ以降なかったわけだが
その後、Sは妹をおかしくしてしまったのは自分の責任だと思い詰めて精神に異常をきたしたらしい
おかしくなったSは18歳のときに妹が見つかったという山の神様の祠の前で自殺したと聞いた
そのときには俺は進学で村を出ていたので、その話を聞いたのは成人して成人式で村に帰省したときだった

以上、体験した俺も何が何だかわからない話です
まとまりのない長文でまったく怖くもない上に意味不明ですまんです


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