[古墳]

ありきたりな話だが、まあ聞いてくれ。
高校の同級生が当時体験した話なんだが、1995年初春の話。

当時そいつら、AとBは相当仲が良くて、よくBがAの家に泊まり
に行ってたんだ。

Aの部屋は当時俺らのたまり場で、俺もちょくちょく顔だしてたん
だが、その日はBだけが来てたらしい。そんで酒飲みながらゲーム
したりだべったりしてた。

だけどさすがに毎日のように話してるせいでネタもつきてきたなっ
てことで、度胸試ししようぜって話になった。

Aの家はでっかい坂の下にあって、その坂の上には古い神社がある。
四世紀にはあったて記録されてるって話。所謂、由緒正しい神社。

でも参拝者は少ないし夜間の照明もない。そのかわり夜間もオープン。
賽銭より地元の寄付で存続してる、市からもいくらか出てるらしい
から、まあ田舎の文化財扱いかな。

もともとは神社じゃなくて古墳だったんだ。その坂の上っていうか
岡の周辺はもともと遠浅の海で、その岡は島だった。その島一個が
でっかい古墳になってたわけ。そんでその後そこに神社ができたっ
てわけ。

ネタ切れのAとBはそこで肝試しをしようって決めて、夜中の1時
頃家を出たらしい。

神社は坂をのぼりきったところから50メートルくらい敷石の道が
続いてて階段がある。その階段を上ってまた50メートルくらい敷
石の道をあるくと社殿にたどり着くんだ。

その社殿の裏は森になってて、その森の中の道を200メートル程
歩いていくと森の中にぽっかり空いた30×30メートルぐらいの
広場に出る。

そこが古墳の石室が発掘されたところで、埋葬された人(女性)の
姿をかたどった石像が祀られてる。

上で言ったコースを一人ずつ、懐中電灯一個持って往復する。
はじめに行った奴が石像の足元に印つけた石を置いてきて、次に行っ
たやつがそれを持ち帰ることで行ってきたことを証明する。
ルールは至って単純。

じゃんけんしてAがはじめに行くことになった。
Bは神社の入口の石の鳥居の前で待機。コースの往復はまあ足元に
気をつけてゆっくり歩いても20分もかからない。

Aの姿が見えなくなって10分、20分、30分・・・。
いつまで待ってもAが帰ってこないわけ。

そんでいい加減飽きたBはAを探しに石室の広場まで行くことにし
たんだって。

で、真っ暗な森を抜けて広場についたら真っ暗な中、Aが懐中電灯
もつけずに広場の端で、岡の斜面の下を見下ろしてたらしいんだ。

口あけてぽかーんて感じ。あっけにとられてるって様子だったらしい。

で、BがAになにやってんだって声をかけようとしたんだけど、その
前に気づいたんだって。

BとAは15メートルぐらい離れてたんだけど、石像の近くから白っ
ぽい人影が明らかにAの方に近寄ってたらしいのね。抜き足差し足っ
てくらいのスピードで。

Bはなんだかわかんないけどとりあえずヤベェって思ったらしい。
本能的に。

そんでぽけーっとしてるAの側に急いで駆け寄って、オイ! ヤベェ
逃げるぞ、って言ったんだがAは、あ? ああ あ? とか言ってる。

その間にも白い人影は近づいてきてて、今度はBの方に向き変えてき
たらしい。Bもうパニック。

そんでむりやりAの背中蹴り飛ばして家まで逃げ帰った。

家についてばたばたしてたら、うるさいからAのおふくろさんとおや
じさんが起き出して、なんだ? って言う。

AがまだぼーっとしてるからBが事情を説明したら、おやじさんが真
っ青になって、神社からちょっと離れたとこに住んでる神主さんに電
話したらしい。時刻午前3時。

そんで3時半頃、神主さん、Aの両親、A、Bで集って、社殿の扉全
部閉めてなんかお祓いやってもらったらしい。

はじめ太鼓ドンドン叩いて神主さんが祝詞みたいなの唱えて、後は
全員一言もしゃべっちゃいけないって言われて社殿の中で正座。

4時から5時ごろにかけて、獣が喋ったらこんな感じかなって太いの
にかすれた声で、日本語風なんだけど意味のわからない叫び声が聞え
続けて外の壁ドンドン叩かれたりして全員ガクブルだったらしい。

で、ようやく夜が明けて6時頃。怪奇現象も収まって、神主さんが
もう大丈夫って言ったおかげで全員安堵。

神主さんの言うことにゃ、あそこは夜は古墳の主のためだけの空間に
なっててはいっちゃいけないらしい。下手にはいると連れて行かれる
と。そんで向こうで古墳の主の奴婢(変換できた)にされちまうと。

とりあえず今回はどうやらお許しが出たから今後心配はいらんけど、
今後この神社に来ちゃダメだと。初詣もダメ。

で、落ち着いて、BがAに、なんであそこでぼけっとしてたんだって
聞いたら、広場についたらいきなり昼になって、なんか周りの雰囲気
も違ったんだそうな。

それになんか潮の香がするから岡の斜面の下を覗き込んだら、一面海
だったんだと。本来、斜面の下は全部田んぼ。干拓地でできた新田だ。

そんで、なんだこれ? と思って時間も忘れてぼーぜんと眺めてたら
いきなりBが来て、背中蹴られたらいきなり夜になって、わけもわか
らず走って帰ったらしい。

もしBが迎えに行かなかったらどうなってたのか。

その後、石室の広場は夜間立ち入り禁止になった。

長文&駄文すまん。


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