[パンデミック]
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また、封を開けてしまった若者達は全員この「何か」に魅入られてしまっており、
さらわれて取り込まれる事とは別の事に利用される可能性があり、「何か」の
力を封じた後でも全く安心できない、なので神様が力を封じた後、これとは別に
御払いをし、それでもだめなら○○神社は分社であるため、本体のある明神大社
へ行って御払いをしないといけない事を伝えた。
更に、「何か」の力を封じるため神様を降ろしている間、「何か」が若者達を利用して
儀式を妨害する可能性も十分にあるので、封を開けるときに立ち会った若者は
全員ここへ集めたほうが良いとの事だった。
そして神主さんは、地主にまず普段神事を行う時の道具と、紙に書いてあるものを
早急にここへ持ってくる様に指示し、若者達はここにいない者も含め全員ここへ
集めるように伝えると、首謀者の若者達には決して何があろうと神社の外へ出ないよう
伝え、自分自身は桐の箱を開け中の勾玉の状態を確認し始めた。
勾玉を調べていた神主さんが言うには、文献にあった通り、勾玉は力を封じるための
ものだったらしく、今は何の力も感じない。ただし、これもやはり文献にあったとおり、
「何か」は勾玉と一心同体なため、「何か」の異様な気配だけは勾玉からも感じるらしい。
数時間後、地主と村のものが神事に使う道具と残りの若者達を連れて戻ってきた
ため、そのまま国津神の力を借りるための儀式が執り行われた。
神主さんが若者達を全員縄で囲った「結界?」のようなものに入れると、祝詞をよみあげ
儀式が始まった。
最初は何事も無く進んでいたが、暫くすると辺りが異様に獣臭くなり、外で何人もの人が
うろつく気配がし始めた。神社へやって来た村人は全員拝殿の中にいるし、地主が
こちらへ戻る前に、残っている村人達に「今日は何があろうと家から出ないように」と
指示していたため、誰かがやってくることもありえない。
つまり「何か」が今、神社の外にやってきているということ。
神主さんが言うには、「今は神様が依代の銅鏡に降りてきているから絶対にあれは拝殿に
入れない、だからこちらから外に出なければ絶対に安全」らしく、あとどれくらいかかるか
解らないが、暫く我慢してこらえてほしいとのことだった。
それから朝まで儀式は続いたが、その間外からは獣とも人とも区別の付かない笑い声、
ざわつく大勢の人の声、何かが歩き回る音やガリガリと壁を引っ掻くような音、朝方になると
あちこちを無差別に叩いて回る音が聞こえてきていたらしい。
朝になり儀式が終ると、全員緊張から疲労困憊で、とにかく早く家に帰って眠りたかった
ので神主さんから「この後」の事を聞いた後拝殿の扉をあけた。
すると、あちこちの木が倒され、神社周辺はそこらじゅうに何十人か何百人かの人の泥だらけの
無数の足跡と、神社の壁には何か大きな生物が引っ掻いた引っ掻き傷があり、鳥や
狸などを食い荒らした残骸まであったらしい。
ちなみに、後から神主さんに聞いた話によると、この村は一度廃村になったためそれまで
の言い伝えや伝統が殆どなくなってしまい、その時に「何か」の存在の言い伝えや神社
の役割も伝える人がいなくなってしまったので、今まで神主さん自身も文献を調べるまで
儀礼的な単なる義務としての神事しか知らなかったのだという。
ただし、文献を調べて見ても「何か」の正体や○○神社と山の神社の関係などは殆ど
解らなかったらしいが。
最後に、なぜこんなうろ覚えのような文才の無い文章をあえてここに書いたかというと、
2年ほど前にその地元の神社が盗難事件にあい、中の祭具や御神体など一式が全て
盗まれたから。
最近多いらしいですね、この手の盗難事件。
問題はその泥棒が桐の箱も盗んだらしい事と、あと数ヶ月で3年目であること、あとは
この「何か」は勾玉周辺の人々を周囲数十キロの範囲で無差別に襲うという事実です。
祖父が言うには「今更どうにもならないし、勾玉の場所がわからなければ対策の
しようが無い」のだそうだ。