[磨り硝子の向こう]

初めて霊らしきものを見たのは学生の頃、近くのゲーセンでバイトをしていた頃です
シフトは夜7時〜深夜1時まで
近所だったので歩いて通勤してました
いつものコースの半分くらいに差し掛かった時に白い花輪が見えました…お通夜のようです

そして次の日、葬儀も済んだらしく花輪はもうありませんでした
定時1時を過ぎ帰宅する時にやがてその道へ出てきました
「そういや葬式だったんだよなこの道のあの家…」
時間も時間だけにちょっと恐怖心が出てきたのですが迂回するとかなりの遠回りになるし、疲れもあったので速足で突っ切ろうと思ったのです
早く通り過ぎたい…3Mくらい近付いた時に気になってつい、ふとその家の玄関を見たのです

擦り硝子で向こうの風景がボンヤリ見える感じの玄関戸だったのですが、下駄箱があってその上に花瓶…
それは、花瓶だと思ったのです…

よく見ると背が丸まり白いザンバラ髪を振り乱した老婆のようなものでした
下駄箱の上、2Mくらいの所にそれが見えたのです
私は全身に寒気を覚え、やがて真横に差し掛かり走り去ろうと思ったその時
首がグルーっと回り私の方を見すえたのです…擦り硝子から透けて見えるその表情は笑っていたようにも見えました

無我夢中で走っていました、息が切れるくらいに
あれは亡くなったそな人だった、と考えるより魂を集めにきた死神のように思えました


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Part209
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