[川岸の戦友]
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最初は皆きょとんとして川の向こうに人影を探している様子だったが、
あんなにハッキリとAが見えているのに見つけられないようだった。
そのうち誰かが「あ〜そういう事か〜」と言って、
皆で爺ちゃんを担ぎ上げて、
「お前はあいつのところまで行ってこい!」とか、
「しっかり泳げよ!」
と言いながら慌てる爺ちゃんを川に放り投げたそうだ。
爺ちゃんは怪我人に酷い事をするもんだと思ったが、
あの退却でAも助かったんだと思うと嬉しいので痛みをこらえて川を泳いでいった。
向かいの川岸ではAが自分の名前を呼び続けているので、
声を頼りに近づいていくと急に激痛がはしり、
しまったワニか??と思ったらしい。
激痛で意識が飛びそうだと思ったとき、今度はベッドの上で気がついた。
さっきまでいた所ともまた違うどこかの友軍の陣地。
爺ちゃんは激痛をこらえながら衛生兵に聞いてみると、自分の目指していた陣地よりも更に先の場所だった。
衛生兵に「君の隊は大変だったな、背負ってくれた仲間に感謝しろよ。」
って言われて、爺ちゃんは色々聞こうとしたが、
今は寝ていた方が良いと取り合ってはくれなかった。
次の日、爺ちゃんは痛みと疲れでぼんやりとしているところにAが訪ねてきた。
Aは開口一番「お前は隠れて何か喰ってたのか?重かったぞ。」
って笑いながら嫌味を言ってきたそうだ。
爺ちゃんはAが運んでくれたんだと思いながら、
これでも痩せたんだと言い訳をした。
言い訳をしながらも心に引っかかる言葉が言い出せずにいると、
Aの方から「ウチの隊は今の所7名だ」と言った。
爺ちゃんはあの川岸で会った何名かの名前を口にしたが、
Aは上げた名前の人は誰も来ていないと言った。
そして今この陣地に居るのは、Aに聞いたところあの川岸に居なかった人たちだったそうだ。
爺ちゃんはこの話をしたときに最後にこんな事を言っていた。
「戦場に行けば死に花咲かさなきゃいかんとか話にはなるけど、やっぱ戦友には生き残って欲しいものだよ。みんな同じ気持ちだよ。」
爺ちゃんは8年前に亡くなってしまったが、あっちでは川岸の戦友さんと仲良くやってんのかな?
終わり。怖くなくてスマン。