[借家]
 俺が中学〜高校くらいまでの間に住んでた借家での話。 
 俺が使ってた部屋は8畳くらい、ボットン式だが便所が付いていたので何気に便利だった。 
        
1、 兄貴の部屋は俺の部屋の真上にあったんだが、ある日ラジオか何かの「誰かが 
喋っている声」がうるさい、と俺の部屋に怒鳴り込んできたらしい。 
 当時ラジカセは持っていたが電源は入っていなかった。っていうか誰もいない。 
 でも兄貴が2階に戻るとやっぱり話し声が聞こえて、よくよく声の出所を探って 
みると、1階と2階の間辺りから聞こえていた。 
 ……と、引っ越してから教えられた。 
        
2、学校から帰ると、先に帰っていた妹が何故か泣いていて、母がなだめていた。 
 俺の部屋に、見たこともない着物姿の女性が正座していた。その女性は母も見たことが 
あるらしい。 
 ……と、引っ越してから聞かされた。 
        
3、大家がしきりに俺の父に「この家を買わないか」と勧めていた。 
 転勤族だしそもそも会社借り上げの借家だし、と毎回断っていたそうだが。 
        
4、台所兼居間みたいな部屋にいると、母が頻繁に具合を悪くしていた。 
 試しにビー玉転がしてみたら床が超傾いていたんで、補修工事をしてもらったら 
母の症状はとりあえず軽快した。 
        
5、数年経ってその家から引っ越すことになり、母がご近所に挨拶をしている時、 
曰くを聞かされたんだと。 
 俺達の前に住んでいたのはどっかの社長夫婦で、無理心中をしたらしい。 
 で、旦那が奥さんを刺し殺したのが俺の部屋。 
 旦那は台所の部屋で首吊り自殺していたそうな。 
        
 そんな家にいながら、全く異変を知らされもせず気付きもせず(非行に走った 
時期があったりもしたが)暮らしていた俺にとっては洒落にならなかった。 
 みんなそういうことはもっと早く教えてよ。