[ぬこドア]
ちょっと前に起きた、うちのぬこがらみの話。 
先に言っておくがぬこ自体に危害はないから安心して欲しい。 
動物のいる家ならわかると思うけど、部屋のドアとかに動物用のドアがついてるよな。 
うちではぬこドアって呼んでるけど、そのぬこドア、普段はマグネットで閉まってて、 
ぬこが頭で押すと開いて、通り抜けるとマグネット作用でばちん!と閉じるという作り。 
このばちん!が結構やかましくて、夜寝てるときとかにぬこがいらっしゃるとまず 
音で目が覚める。そんな感じ。 
その日、俺はベッドん中、携帯で洒落コワまとめサイトを読み耽っていた。 
夜中の洒落コワほど楽しいものはない。真っ暗闇の中で楽しい時間をすごして 
いると、例のばちん!という音が向かって正面(ベッドと平行してドアがあり、俺は 
横を向いて携帯を見ていた)から聞こえた。ぬこ様のご登場である。 
いつもなら、すぐにうやうやしく掛け布団を持ち上げて彼女をお招きするのだが、 
洒落コワに集中していた俺はまあ適当に乗っかってくるだろう、と声もかけずに 
記事を読み続けていた。 
気配でぬこが寄ってくる。大体いつもベッドに両手をかけて、こちらをうかがってから 
よいしょとジャンプしてくる。案の定、携帯の薄明かりの向こうにうっすらと 
ベッドの端にかかった前足が見える。 
と、思ったら、足じゃなくて手だった。 
赤ん坊くらいの大きさのおっさんが、ちょこん、と両手をベッドの端に乗っけて俺を 
じっと見てんの。丁度携帯挟んで向かい合う形で。無論、超至近距離。 
一瞬何が起きてんのか全くわかんなくて、それからヒョー!と至極みっともない声を 
上げて飛び退る俺。携帯放り出してしまったのでほんとに部屋ん中真っ暗。赤子 
サイズのおっさんと二人きり。 
やべえやべえと思って頭真っ白になってるうちに、いきなりパン!と部屋の明かりが 
ついた。俺の絶叫に驚いた兄貴が様子を見に来てくれたのだ。 
明かりがついた部屋には、おっさんはもう居なかった。 
その後俺に何かあったとか家族に事件が、というのは一切ないんだが、 
俺の部屋にぬこが入ってきてくれなくなったのはなんとも悲しい。 
さすがにそのぬこドアは封鎖してしまったんだけど、透明なプラスチックで出来てる 
ので、ガムテでとめた向こうに何か見ちゃったらどうしようと、時々気になって 
注視してしまう今日この頃。 
お宅のぬこドアは大丈夫? 
この話、あともう一個あるんだけどもし需要があればまた書かせて欲しい。 
長々とお付き合いありがとう。