[おしっこ]
僕の祖母と伯父さんの話。 
それは、第二次大戦が終戦間際のころのこと。 
そのころ、祖母は樺太に住んでいたのだが、戦局がいよいよ悪化してきたので 
4歳になる息子(僕の伯父さん)とまだ赤ちゃんである娘(伯母さん)を連れて 
本土に帰ることにしたそうです。(ちなみに祖父は召集されて中国に従軍) 
        
本土に帰る連絡船の甲板上では、天気がよかったため多くの人が 
外の空気を吸いに来ていたそうです。 
祖母も、幼い子供ふたりを抱えて、しかも夫は戦場にいるし、で途方にくれる 
気持ちと、祖国に帰ることができる喜びとが混ざった複雑な心境で 
ただ青い空と海を見ていたそうです。 
        
突然息子が袖を引っ張りました。 
聞くと、おしっこがしたいとのこと。 
ついさっきしたはずなのに、おかしいなと思いましたが、小さい子を一人で 
行かせるわけにもいかないので、便所に連れて行くために 
船内にもどりました。 
すると、バンという大きな音と共に船が大きく揺れました。 
慌てて甲板に行くと、そこは地獄でした。 
爆弾が落とされたようで、多くの人が倒れ、 
原型を留めない肉片が散らばっていたそうです。 
        
この話を聞いたとき、伯父さんのおしっこスゲーと思うと同時に、 
明らかに民間船である船に爆弾を落とすロシア人が怖いと思いました。 
しかも、その後無事に目的地にたどり着いたことを考えると、 
撃破目的じゃなくて、兵士達の遊びみたいな感じで爆弾を落とされたのでは 
ないかとさえ思い、ますます怖くなりました。 
        
        やっぱり人間がいちばん洒落にならないくらい怖いや。