[母の言葉]

俺の母親は胃癌だった
何度か手術をしたが、転移があり死が訪れるのを待つだけだった
そんなある日ずっと付き添いで介護をしていた姉が、笑いながら俺に話した
『お母ちゃん怖いこと言うねんでぇ』
窓の外に植えてある木の方を指差し
『あそこに若い男女が立ってて、微笑みながらこちらを見てるって言うねん。』

母親が入院していた病院は大阪の日赤病院で、今は建て替えられたが
当時はバカでかいわ、古いわで昼間でも薄気味悪い病院だった
俺は少し姉に同情したが、母親の言った事については驚きはなかった
母親は元々霊感が強く霊を見るのはしっていたし、痛み止めのモルヒネで少し雄弁になったのだろう
その時はそう思った、だがその霊の話しはそれで終わりではなかった

何日かがたち、姉は今度はちょっと困ったように俺に話した
『あの日から毎日夜になると、あの霊が来てるらしいねん…』
『へぇーホンマに?』
『それでな、この前の朝にお母ちゃんが言うててん【昨日の夜は病室まで入って来はって、〇月〇日〇時に迎えに来るって言ってはった】って言うねん…』

はっきり言って俺はオカルトが好きだ、だけど神様も人間が造りあげた偶像だと思うし
心霊写真何かは何億枚と撮られ中での奇跡的な偶然だと今でも思っている

約20日後母親は逝った
彼らが迎えに来ると言った〇月〇日〇時より30分早くに
霊感も何もない俺が語れる唯一の不思議な話しはこれで終わりです


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Part205
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