[女とスーツの男]
小さい頃から頻繁に心霊体験をしてきて、本当に洒落にならなかった話。 
中学2年の頃の日曜日。2段ベッドの下で昼寝をしてた。母親が台所で料理を作る音で目が覚めた。オレンジ色の光。(夕方かぁ…。そろそろ起きようか。)と思ったが、体が動かない。 
(金縛りか…)いつものことだから、冷静に状況判断していると、あることに気づく。私は眠る時はうつ伏せで眠る癖がある。金縛りで、胸の上に何かが乗ってるとか見たくないから。 
そのうつ伏せの背中に……誰かがのってる……。 
顔が左側を向いた状態で固まる。(ヤバい) 
そう思った瞬間、バサッと顔に何かがかかった。……髪の毛だ。真っ黒の長い……。ゆっくり髪の毛の主が私を覗き込む。女の人。白い着物を着ていた。ニタッと口紅をひいたような真っ赤な唇が笑った。 
その女の人が背中に抱きついていた体勢を、馬乗りに変えたのが分かった。背中に冷や汗が流れる。 
女の人は顔を引っ込めると、いきなり後ろから私の首に手をかけてきた。 
(殺す気だ!) 
徐々に指が喉に食い込んで、馬乗りになった体から全体重をかけているのが分かる。 
ヤバい 
ヤバい 
ヤバい 
心の中でお経なんかを唱えまくってみたが、後ろから「フフッ」と鼻で笑う声が聞こえる。 
本当に殺される。 
「助け……」 
そう少しだけ出した瞬間、ベッドの側に誰かが立っていた。茶色のスーツを着た男の人。 
その瞬間、「ヒッ」か「チッ」という声を残して女の人が突然消えた。 
その男の人をよく見ようと目線を動かした瞬間 
「ご飯だよ!いつまで寝てんの!」 
という母の声がして、男の人は消えてしまった。 
急いで起きて、洗面所で冷たい水で顔を洗って鏡を見ると…… 
首に指の後がくっきり残っていた。 
私はその後何年かも、幾度かこの女の人に殺されかけ、その度に茶色のスーツを着た男の人に助けられることになる。 
また機会があれば書きます。