[ギイイイイ]
かなり前のはなし。 
当時肝だめしというか心霊スポットめぐりが仲間うちで流行ってて、夏になると夜中車であちこち行ってた。 
その日はKの提案で山の奥にある心霊トンネルに行こうってなった。マイナーなスポットなのかあたりには全く人気がなくてひっそりしていて夏なのに肌寒かったのを覚えてる。
さぁ行くかってなって、懐中電灯たよりに獣道に入った。
Nもおれも知らないスポットだったので、Kに「まだつかないんだけど本当にこの道であってんの?」 
って聞いたら、「わかんない、まよったやべぇななんてな」なんか言うからNとふざけんな遭難しちまうだろー、とか言いながら一本道だし道なりに戻れるから探検だと思えば 
まぁいっかとか思ってた。 
どんどん登っていってふと気づくと目の前がポッカリとひらけている場所についた。 
Nが「やっぱりな、K、お前道間違えてるよ」っていったらKは難しい顔して「まえ来たときは10分でついたのにな…入り口も間違ってないしなんでだろ」
そしたらおれが目の前ギリギリ見えるとこに小屋があるのに気づいた。 
いってみようぜって近づいていくとおんなじようなすごいボロい小屋がいっぱいあって、廃村だと思った。 
みんなヤバイところにきちゃったなってあの時肌で感じたと思う。 
でもKがおもしろそうだからって小屋の周りをぐるぐるまわりはじめた。 
そしたら雨戸がしまってて、さらに異様な雰囲気を醸し出している一軒があってどうせだから入ってみようぜってKが言い出した。 
Nはもう怖じけづいちゃって外で待ってることになった。 
おれとKで中に入ると全く散らかってなくてそこだけ人がいるような感じだった。ヤバそうだから出ようってなったとき、歯ぎしりのような「ギィィィイ」というような音がして視界の隅っこになにか白いものが映った。 
人だった。 
ただし普通ではない。 
相撲の「ハッケヨーイ」のポーズをとりながら首は180度回転してて逆さまになってた。 
全身がおしろいで塗ったように白かった。 
走り続けて車についたころにはみんな肩で息をしていて、「本当にヤバいのをみちまった」だとか「お祓いうけたほうがいいか」とか話しながら車を発進させようとした瞬間、後ろからあの「ギィィィイ」という音がすぐそばで聞こえた。
        
「ヤバいっ!」 
おれとKは一目散に外に走りでて、待っていたNを連れて全速力でもと来た獣道を走りつづけた。走り続けてる間あの歯ぎしりの音はなりやまずしばらくすると消えてしまった。 
振り向けなかった。 
車のすぐ後ろにあの白いのがいると思うとまじでチビりそうだった。 
おれは車を全力で発進させた。もう脇目もふらずとにかく人気がある街までいかないとって思った。 
街までついて一安心して後ろを見てみると車に大きな引っ掻き傷がついていた。 
あの「ギィィィイ」という音はこれだった。 
その夜はみんなをうちまで送り届けて帰宅した。 
次の日も何事もなく1日がすぎお祓いだとかは必要ないと思われた。 
次の日も、次の日もなにもなかった。 
あれからだれもケガしてないし病気もない。 
ただその話をするのは今でもタブーに仲間うちではなっている。 
あの「ギィィィイ」という音がいつ聞こえてくるのか不安でたまらない。 
長文スマソ