[女の奇行]
俺は大学入って直ぐ、同じ高校だった先輩に、「オカルト大好きクラブ」通称オカクラに誘われた。 
サークルじゃなくて、先輩後輩入り乱れた7人の仲良しグループの延長だから、活動ももちろん適当。 
スポットを知ったら、適当なメンバーで適当に行ってみるってだけ。 
まぁ要するに、ただ目的もなく集まってワイワイやるだけなんだが…、 
月1ぐらいの頻度の活動なんだけど、結構何度もヤバイ感じになったことがあるんだよ。 
ちょっとそのうちの一つを聞いて欲しい。 
長いから、つまんないと思ったらスルーしてくれ。 
その日は先輩(M)の召集で、俺、タメのBの3人で、Mのアパートの近くの山にある、廃ホテルに行くことになった。 
ホテルまではM家から歩いて20分ぐらいかな。 
なんかオカクラの掟で、「スポットにはなるべく徒歩で」っていうのがあって、運動不足の体に鞭打ったんだ。 
山道だったから、行くだけで結構疲れてた気がする。 
ホテルの傍まで来ると、辺りは山道なんだが結構明るくて、あまり恐怖ってのは感じなかったかな。 
とにかく3人で月1の趣味を楽しんでた。 
やっとホテルについたんだが、その空気の微妙なこと…w 
雰囲気はあるんだが、やっぱり恐怖はなかったな。 
とりあえず周りを探索することに。 
すると明かりから少し離れた、薄暗いスペースに、人を発見したんだ。 
それも2人も。 
3人ほぼ同時にその人影に驚いて、また2人いた人影のうち1人も、こっちをみて驚いてた。 
人影はどうやら普通の人←wで、男女のカップルに見えた。 
こっちを振り向いたのは、男のほうで、金色の長い髪をした女のほうは、うずくまっていた。 
どちらも薄暗いのが手助けして、あまり表情が分からなかった。 
女なんて髪のせいで横顔すら見えなかった気がする。 
「どうしました?」 
とMが代表して声をかける。 
ホテルは結構有名なスポットだったから、先客ぐらい居てもおかしくはなかった。 
だが女の様子は明らかにおかしかったんだ。 
よく見ると女は嘔吐していた。 
サワーな香りと、嘔吐物が見えたんだ。 
心配そうに女と俺らとを交互に見ていた男は、Mの声に応える。 
「暫く辺りを見回してたら、突然こうなっちまって…」 
台詞はきっと正しくないが、大体こんな内容だったと主。 
そういいながら男は、ガクガク震える女の背中を摩りだした。 
面倒見のいいMは、女の様子を計るため、2人に近付く。 
当然俺らも後を追った。 
Mが大丈夫かと問いながら女の表情を伺おうとしたときだった。 
「うぐえええええええ」 
女はわざとらしい程の声をだし、また嘔吐した。 
だが、女から吐き出されたものは、さっきとは違い、何やら赤と黄色の混ざったような、ドロドロしたものだった。 
それから何故か突然、女はスクっと立ち上がり、体のあちこちを、激しく掻いたり叩いたりしながら、狂ったように踊りだした。 
ドロドロに塗れたその姿と、同時に出していた奇声(「アヅ-」とか「ギエ-」とかだったかな)、さらにその焦点の合ってない目線があまりにも恐ろしく、今でも思い出すととりはだがやばい。 
至近距離だったMは驚いて走りだし、それにつられた俺らも走った。 
振り向けないほど全力で。 
女も男も俺らの後は追ってない様子で、その後どうなったかは、分からない。 
その後M家で、Mは「ありゃもはや人じゃなかった」と叫んでいたが、そんなことどうでもよく、俺とBはただただ震えていた。