[しらんほうがいい]

ある地方の伝説で、水害が起こると神の祠に子供を生け贄としてささげるというものがある。
その伝説はもう遠い昔の話で、今はそこは観光地となって紅葉の季節には観光客がつめかける。
だが、その生け贄を入れていた洞穴はまだ残っている。
何故かしめ縄も何もしていない、ただの横穴で観光に来る人は皆そこを覗き込んだりしてる。
そこは、生け贄の子供を逃げないように紐で縛って投げ入れた場所。
そして増水したときにその水で子供は溺死する訳なんだけど、その呪いを封じる為の社が
その洞穴を見下ろせる場所にある。

知っていたので行くのは嫌だったのだが行った。
そして事もあろうに、その穴を見つけてしまった。
ただの横穴と信じたかったが、呪いを封じる方の社を見つけてしまったのであれはやっぱり本物?と。
やっぱりみんな覗き込んでる。入ってる人もいる。
何もない、本当にただの横穴なんだな、一見。でもよく見ると、中に絶対に祭壇だのおいてあったらしい
痕跡は解るんだけどね。
そういう事を信じない夫も、その穴を写真に収めた。
姑は「やめろ」と言ったのに、その穴に私の息子と二人で入って写真を撮った。

私はそういうときの「穢れの払方」を知っていたので急いで遊歩道から川縁に降りて、
白い石を捜し、息子に息を吹きかけさせ、それを再び川の中に投げ込んだ。
(これはその伝説?を教えてくれた人から聞いた方法) 姑にはバカにされた。

さて、自宅へ帰り、早速撮ってきた写真をPCに取り込む夫。
すると、「うわあああ!」と叫び声。
「どうしたん?」と聞くと「見るな!絶対見たらあかん!お前の言うことは本当やった!」
そう言って、急いで二枚の画像を消した。
その穴の写真と、そこに入ってる姑と息子の写真。

「何が写ってた?」
「・・・・聞くな。しらんほうがええ」
「あらそ。だから言ったのにねえ・・・」としか私は言わなかった。
「見るんじゃなかった・・・・ああああ・・・」
夫は念仏を唱えている。何が写ってたんだろうか・・・?

消したはずの画像がまた残ってたりとか、そういうオチは無いけど現在姑は
原因不明の病で入院中。
死にそうではないけど苦痛ではありそうだ。毎晩、子供の夢を見るとか。気の毒に。

皆さんもむやみに横穴とか入り込んだりしないようにしましょうね・・・


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