[現像]

いつもお世話になっているので、たまには投下します。
さほど怖くも面白くもないと思いますが、暇つぶしにでもなれば。

学生時代、俺は写真の現像ショップでバイトしていた。
スーパーとかに併設されてる、30分でできますみたいなの。
元々怖いものは好きなので、店長に
「心霊写真とかねーんスかww」と聞いてみたものの
「ないねー。テレビとかに出てるアレもねぇ、大抵説明つくよ。」
とあっさり返されてしまった。

事実、オーブやら赤い光やらと目にすることが多かったものの
それらは確実に「埃の反射」や「ネガの感光」で終わるものだった。
だが何回か。
知識の乏しい自分では説明のつかない写真もあった。

実は現像した写真は、店員が一通り目を通す。
ネガから焼く時に1回。
仕上がったものを1回。
ミスプリやエロ写真なんかを弾くためだ。
その日も焼き上がった写真をざっと検品していた。

だがふと手が止まる。
部屋の中、日だまりで小さな男の子がはしゃいでいる写真。
使い捨てカメラで撮ったであろうそれは、子供の素早い動作を
とらえきれず、手と顔がブレていた。
それさえなければほほえましい写真だ。
「どうすっかな〜・・・」

1枚いくらで代金をいただくので、この手の失敗写真は
渡すと嫌がられる事が多い。
微妙なものは会計の時に確認して、いらなければ破棄していた。
これもそうしよう、そう思ったがどうも違和感がある。

やがて、気がついた。
ぶれるときは、支点・力点で、例えば腕がぶれる場合
肘から動きの激しい手先にむけて扇状にブレが写る。
腕はいい。
その写真は、顔が奇妙な方向に動いていた。
やや傾げた顔、そこからまっすぐ平行にぶれている。
頭を動かしたら、普通首や肩も動くよな?それがなかった。

「・・・・・。」

写真は普通に渡した。特に何も言われなかった。
気づかなければいな、と、思った。
詳しい人に聞けば簡単に説明がつくかもしれないが、俺的に怖かった話。


次の話

Part202
top