[田辺君と俺]

僕が小学校3年の時、田辺君という子と仲が良かった
田辺君はユリゲラーの真似だ!と言って目の前でスプーンをグニャリ曲げた
僕はスプーンをもとに戻そうとしたけど固くてダメだった
その手品のタネ教えてよと頼んだけど、田辺君は教えてくれなかった

夏休みが終わり学校に登校してみると、田辺君の席がなかった
クラスメートがチラチラ僕を見てた
担任が出席を取った時、田辺君の名前を呼ばなかった
田辺君は転校したのか?と僕は思った
担任もクラスメートもなぜ田辺君について何も言わないのだろうと不思議に思った
その時、担任が僕の名前を呼んだ、前に出てこいと言ったんだよ
クラスメートたちがさらにチラチラ僕を見てた


誰も田辺君なんか知らないと言ってた
教室の中に知らないヤツが堂々と座ってたので
みんな気味が悪いからチラチラ見てたんだって
知らないヤツとは僕のことさ
自己紹介する前に席に座ってる僕を見て担任は
なんて神経の太い子だろうと驚いてたんだって
僕にはみんなで勉強した1学期の記憶がある
その中には当然、田辺君とすごした記憶が鮮明にある
でも先生やクラスメートの1学期の記憶の中には
田辺君と僕は存在しない


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Part202
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