[そっくり]
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朝8時頃に眠り、午後4時に起きるという妙なリズムの生活がはじまり暫くたったころ。久々に友人と会うことになり、待ち合わせ場所の学生会館へ。
昼間に行動すること自体が久しぶりだったが、「何か」に対する不安は消えなかった。そこで待っている間どうしても気になり、家電話に電話ボックスからかけてみた。
やめておけばよかった、こんなこと。
トゥルルルル・・・・ガチャ
「ただいまでかけております。云々」
ホっと胸をなで下ろした次の瞬間、
「はい、だれ?」
エ?誰もいないはずの家に、誰かがいる。そして、電話に誰かがでてる。卒倒しそうになったが、電話番号を間違えたのかもしれないと何とか気を落ち着けた。
漏れ「えっと、xxx-xxx-xxxxですよね?◆▲(漏れの名前)さんのお宅ですよね?」
相手「その番号だけど、●▲というんだが。」
もう完全にパニックになった。
漏れ「あ、あ、そうですか・・・失礼しました。」
相手「ハハハ、そうか、お前か。会いたかったよ。ハハハ」
本当に卒倒しそうだった。漏れは、とにかく電話をガチャ切りして、待ち合わせしてた友人に一緒に家に来てくれと頼み、すぐに取って返して家に帰った。

震える手で鍵を開けようとする漏れを怪訝そうに見る友人。玄関を開け、入る。特段おかしな様子はない。部屋のドアをあけても、特段おかしなところはないように思えた。ホッとした。本当にホっとした。
友人には事情は何も説明せずに来てもらったんだが、何とか誤魔化して遊びにでかけた。結局、その日は他に何事もなくおわったはずだった。

終電少し前の電車で帰宅後、部屋に入ると留守電が入っていることに気付いた。まさかとは思いつつ、恐る恐る聞いてみた。
・・・メッセージを録音してください。ピィー。
「はい、だれ?」
「えっと、xxx-xxx-xxxxですよね?◆▲(漏れの名前)さんのお宅ですよね?」
「その番号だけど、●▲というんだが。」
再生を止めた。昼間のあの電話の内容そのままだった。すぐさま録音を消し、モジュラージャックを引き抜いた。テレビをつけ、ひたすら気を紛らわしつづけた。

当時、テレ東で「テレコンワールド」という深夜通販番組をやっていて、それを見ていたことを覚えている。
ふと目が覚めると、昼の12時過ぎ。いつの間にか机に突っ伏したまま寝ていたみたいで、テレビもつけっぱなしだった。夢だったらいいのに等と考えた。この期に及んでそう考えねばならないほど、昨日のことが強烈すぎた。

変な姿勢で寝たせいか、体が痛い。もう一度寝ようときちんと布団で寝ることにした。午後2時くらいだろうか。ウトウトとし始めたとき、閉め切ってあるカーテンとカーテンの僅かな隙間に違和感を覚えた。
見てる。誰かが見てる。隙間から誰かが見ている。
道路に面した窓のため、白昼堂々覗き込んでいることになる位置に誰かが居る。
恐怖と同時に好奇心もあり、すぐさまダッシュで窓を開けた。
当然のごとく(?)誰もいない。普通に通行人がいるだけ。
何もなかったことを良かったと思いつつ部屋に戻り、テレビをつけ見始めたときだった。
ピンポーン
チャイムがなった。嫌な予感はしていたのだが、どうせNHKか新聞の勧誘だろワロスワロスと応対しに玄関に向かった。ドアからガチャガチャ音がする。

鍵を開ける音?まさか!
急いでチェーンロックをして開けられまいとドアノブを握りしめた。
しばらく攻防が続いたが、こちらが根負けしてしまった。ドアが開き、僅かな隙間からこちらを覗いている。目が見えた。そして、顔が見えた。

漏れ?それはまさしく漏れそのものかと思えるほどに、漏れそっくりだった。いや、やっぱり漏れ自身かもしれない。頭がパニックになった。

そのあと何か言いあいというか何かしらの会話をしたのは覚えているが、他に何も記憶がない。気がついたら、何故か廊下に倒れていた。もう既に暗くなりはじめていたから、恐らく午後6時はまわっていただろう。

少なくとも3時間以上倒れていたことになる。
ドアはチェーンロックはしてあるが、鍵は開いている。

そして何故か部屋の窓も開いていた。体には多少の擦り傷はあったが、幸い他には大きな傷はなかった。もう何が何だかさっぱりわからない。
言えることは二つだけ。漏れと瓜二つのヤツが漏れの部屋の鍵をもっていて、はいってこようとした。

そして恐らく、そいつは漏れがいないときに部屋に入っていたらしいこと。本当に訳がわからない。

続く