[気にするな]

電車で帰省していた時のこと。
結構まんべんなく人が座っているくらいの乗車率で、私は優先席付近に立っ
ていたのだが、貧血を起こしてしまい床にしゃがみこんだ。
すると優先席に座っていた老夫婦の片方(おじいさん)が席を譲ってくれ
た。私も最初は遠慮したが「わしは健康だけどアンタ具合悪そうだし、優先
席はジジババの為だけのもんじゃないよ」と言って下さったし、おばあさん
のほうも勧めて下さったので座らせてもらった。貧血が回復したら立つか移動
しようと思いながら。
で、しばらく座っていたら、とある停車駅でおばちゃん二人が乗ってきた。
そのおばちゃん、暫く席を探して車内をうろついていたが、生憎満席だった
らしくドアの方に戻ってきた。そしてドア付近に立ったまま喋り出したのだが
その内容が丸聞こえ。「あの子老人立たせて座ってるわよ」「私たちだって
立ってるのにねぇ」「これだから最近の若い子は……」と完全に私に文句を
言っている。
なんかいたたまれなくなって立とうとするも、クラっときてまだ立てそうに
ない。
私の様子に気付いたおばあさんが「いいのよ気にしないで」と言って下
さるものの
肩身の狭い思いをしてたら、おじいさんがキレた。

おじいさんはそのおばちゃん二人に歩み寄って行って
「確かにあの子は若いが、具合が悪いからわしが席を譲ったんだ。
あんたら見た所座らなきゃいけないようなトシでも身体でもないだろうが。
悪口言ってる暇があったら少し他人のこと考えたらどうだ」
と穏やかだが力のある口調で窘めた。
おばちゃん二人、最初は呆然とおじいさんを見ていたが、
スーっと姿が半透明になりやがて消えた。

戻ってきたおじいさんは、唖然とする私に「あんなの気にする必要ないからね」と朗ら
かに笑っていた。



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Part199
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