[幸福の壺]
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その壷のつくりは何か特殊で、どうやら簡単に開けられないような仕組みらしい、詳しい事は分からないがそういう壷らしい。 だからバレなかった。
次の日から、不思議な事が起こった。 他民族の家から叫び声が聞こえ、その家の子供が死んでしまったのだ。 壷を持って帰った子だ。
そしてその家の妻、隣の家の子と・・・次々に他民族の女子供が死んでいったらしい。 キムたちは「我ら部族の呪いがヤツらに降りかかったんだ」
そう思ったが、そういうわけではなかったんだ。 キムのまわりの女性や子供も死んだんだ。 ・・・おかしい、やはり実際に殺した我々も恨みの対象なのか・・・
しかし、よくよく考えると女と子供ばかりが死ぬんだ。 男性は無事なんだ。 そこでわずかに生き残った女子供をつれて村の大半がついに逃げ出した。
奴隷に逃げられようと他民族はそれどころじゃなかった、大切な跡取りが次々と死んでいく。 これは間違いなくキムたちが何かをしているに違いない。
と、気づいた時には後の祭り、キムたちはすでに逃げていたんだ。

逃げ延びた先が、例の山さ。 そこで再び生活を始めたキムたちは、今回のこともあり、他の集落ともできるだけ仲良くするようになった。
苦しいときは助け合い、笑い合うようにすると。 そして貧しいけど、またつつましい生活が始まった。 めでたしめでたし

・・・とは、いかなかった。 例の他民族がやってきたんだ。 男だけになった彼らはニタニタ笑っていたそうだよ、何せ分かったんだからね
呪いの正体、それは例の壷だったんだよ。 彼らは壷の中身を無理やり調べたんだろう、子孫を殺す呪いの壷。
そして壷はパワーアップしてたんだ、どうやら壷の中身が多いほど・・・強いんだ。 だから彼らはその壷で死んだ我が子、我が妻をたっぷり入れてね。
あとはもうグダグダさ。 呪い呪われ、死んで壷に流して。 その話が都のお偉いさんの耳に入り、役人が来たときにはすでに、女と子供が消えていたんだ、
その村から山から地域から・・・ほとんどね
男たちは都へ連れて行かれ処刑され、女と子供の怨念を恐れた都の人はそれぞれに墓を作った。
そうなる前にキムたち含むわずかな生き残りは北へ北へと逃げていったそうだ。

気味が悪い話だよ、飢饉で子供を食った話とか色々聞いてきたが、この話だけは何か・・・気分悪ぃぜ。
しかし壷はどうなったんだろうか。 ま、恐ろしいものだから、国に処分されたんだろう。 

友人が「え?」と聞き返してきた、
私はもう一度聞いた「本当に壷なのか?」
「う〜ん、まあ壷だって言ってたと思うぜ」
「壷じゃなくて箱じゃないか?」
「え?なんでよ・・・別に壷だろうが箱だろうが、とりあえず入れ物だろ?」
「だって、しってるよ・・・その壷・・・というか箱」
「あ? マジかよ!!」
「うん、その壷(箱)の作り方知ってる部族の人、多分日本に来たことあるんじゃないかな?」
「・・・え・・・」
「しかも、日本でソレ作ったんだよ」
「・・・え・・・ウソだろ、なんでお前が知ってるんだよ!!」
「うん、オカ板で一時期流行ったんだ」
「・・・? 何が?」


         「コトリバコ」

私はすっかりぬるくなったビールを一気に飲み干した


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Part198
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