[消えたメル友]

仕事場の一人から聞いた話。

その人(A)は色々オカルト体験がなにげに多いのだが、
今から5〜6年前に、洒落にならん怖い体験をしたという。

Aの地元には、
「魚料理屋からホテルに変わり、それが廃業して廃墟となった」という
有名なオカルトスポットがあるのだが、
Aはふとそこに行ってみることにしたのだそうだ。
本当にお化けがいるのかどうか、遊び半分で確認したかったらしい。

夜だから勿論暗い。
当然誰もいない。

と、ふいにAの携帯がメールを受信。
びくっとして直ぐにケータイを開き、メールを開いた瞬間に画面真っ黒。

…怖くなって逃げ帰り、後日もう一度メールを確認したのだが、
そもそも受信履歴にはその時のメールは存在していなかったという。



携帯の電池が丁度ギリギリで、メールを受信した直後にバッテリーが切れた…
という可能性もあるのだが…もしそうでないとしたら一体なんだったのだろう。

……という話を今から数ヶ月前に聴いたのだが、実はその話にはもっと怖い話があったというのを、
つい先日Aが話してくれた。

実はその時Aは一人で行ったのではなかったのだ。
当時メールを交換するだけのメル友(B)というのがAにはいて、
その廃墟に行こうと誘ってきたのはBからだったという。
初めてのBとの対面というのもあって、多少強がってもいたのかもしれないが
二つ返事でAはOKした。

現地に行くとBと名乗る奴がいた。
そして、もう一人。
そいつはCといって、そいつもBのメル友なんだという。

廃墟に入った三人。
そして、先述の真っ黒メール…

と、あることに気付いた。

Cがいない。

AとBは慌てて探すが、なにせ真っ暗な廃墟なので、ただ歩くのですら危ない。
二人は怒られる事を覚悟して、兎に角警察に連絡した。
色々訊かれたりして、その日は終わり、その後もたまに警察がCの事を訊いてきた。

そして結局Cが見つかったという話は聴いていないそうだ。

なんでその話を最初に云わないんだよと文句を云いたかったけど、
考えると怖くなるから、あえて最初の時には云わなかったのかも知れない。

Cはどこに行ってしまったのだろうか。
そもそもCは生きている人間だったのだろうか?
単にCが家出志願で、「廃墟探検でそのまま行方不明になる」というシナリオを作って
まんまとトンズラして今は北海道あたりで気楽に暮らしている……というのなら
いいんだが。
気まずくなったのか、Aはその後Bとは連絡をとっていない。

その廃墟は今でもあり、
Aが探検した後、殺人事件があったりして、今ではすっかり行列が出来るオカルトスポットらしい。


次の話

Part197
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