[犬の散歩]

3年程まえの体験談。
千葉県某市に住んでいた頃の話。
時期としては9月の半ば頃、まだまだ暑さの残る時期。
仕事帰りの俺は、K成線の●津駅から自宅へ向かっていた。
自宅へは、駅前商店街を抜けて、干潟脇の遊歩道を通って、自転車で10分程度。
その日もいつも通り自転車を走らせて帰宅していた。
ただいつもと違い、何か嫌な気配はしていた気がする。
まあ、夜12時過ぎで明かりも無い道を走れば、たまにはそんな感じもするかも、と特に気にしなかった。

商店街を抜け、遊歩道へ入る。
街灯もポツポツとしかなく薄暗い道ではあるが、通い慣れた道。
いつも通り自宅へ向かって進んでいた。
少し行くと、目の前に人影が。
犬の散歩をしているようだ。
こんな遅くに大変だな、と思いながら追い抜いた。
そこから少し進んだ先のベンチ前辺りで自転車を止め、跨ったままタバコに火を点けた。
ここまで来れば、遊歩道の出口まではすぐなので、休憩がてらそのまま喫煙。
そういえば、さっき追い越した犬の散歩してる人は、と思い来た方を見ると、ゆっくり近寄って来る人影が。

犬好きな俺は、どんな犬かと思い、その人影の方を眺めていた。
が、よくよく見ると、その人影、何かおかしい。
頭の部分が…無い?
人の影が、ウルトラマンのジャミラみたいになってる。
…何だろう?
そう思っている間にも、犬の散歩の人はゆっくりこちらの方へ近づいて来る。
そのとき、それがちょうど数少ない街灯の所に差し掛かった。
…はっきり見えちまった。

頭の無い人が犬を連れてる姿を。
そして、その人のものなのか、人の頭部をくわえた犬を。

恐怖と混乱で体が動かない。
目を逸らしたくても、逸らせない。
すると、犬にくわえられた人と目があった。
その瞬間、その表情が、不気味な、そして嫌な笑い顔に変化した。
それを見て「ヒッ」とでもいうような声が出た。
その自分の声で我に帰った俺は、一目散に自転車で逃げた。
とにかく明るい方、人通りのある方へ。

夢中で近くのコンビニ前へたどり着く。
恐る恐る後ろを振り返ってみたが、何も付いて来てないようでホッとする。
その日は無事帰宅できた。

以後その遊歩道を通勤に使っていないが、あれは何だったんだろう?


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Part197
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