[放課後の教室]
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なんとか脇をすり抜け、廊下を走って逃げた。
もつれる脚で必死に走って校舎を飛び出し、
そのまま走って学校を脱出した。
林と畑が続く、家までの人通りのない淋しい道を走り通した。
よくあんなに走れたもんだと思う。
すぐ後ろにあの知らない女子がついて来ているような気がして、
とてもじゃないが立ち止まれなかったのだが。

恥ずかしいが、家のところまで来て気づいたらちびっていた。
家に入ると、何事もない日常感が戻ってきた。
鞄を教室に置いてきてしまったが、
そのことは母には適当にいいわけしてその夜は寝てしまった。
神経が焼き切れたみたいに、夢も見なかった。

翌朝は逆に、夢の中で怖いものから隠れているような、
ふわふわした不安な気分で登校した。
(こんなことがあっても素直に登校しちゃうところが厨房だよね)
おそるおそる教室に行くとKが俺のところに来て、
「昨日私らが残って遊んでたの、黙っててね」と言ってきた。
コッ○リさんは禁止されていたのだから、
叱られないように内緒にね、というわけだ。

あの変な笑いの理由をKに尋ねたかったが、
「昨日いたのは、お前と他にM、Y、あと一人は誰?」
「え? 三人だけだけど? 何の話?」
とKがきょとんと不思議そうに答えた後では何も聞けなかった。
Kも俺が悲鳴を上げながら逃げたことについて、
俺に何も聞かなかった。

MもYも、普通のクラスメートに戻っていた。
あのとき彼女らは自己催眠状態だっただけなのかもしれない。
しかし外にいた女子は結局誰だかわからなかった。
文化祭を見に来ていた他校の女子生徒だとすれば何でもないが、
三人がそんな子知らないというあたりが釈然としない。

後で考えたことだが、俺があのとき三人を偶然見つけたおかげで、
あのまじないの「完成」を妨げたのではないか。
それでKとMとYはこちらに戻って来たのではないか。
そんな気がした。
俺の唯一のオカルト的体験と解釈している。

俺は今でも薄暗いところで女の子が何人か集まっているのを見ると、
どきりとする。
そしてそういうときに後ろを振り向くのには、
少し勇気がいる。

※俺の住んでいる地域では、「コッ○リさん」と口に出して言ったら
※取り憑かれるとされているため文中では伏せてます。
※Kが「遊んでた」としか言わなかったのもそのためです。
※呼び出すきっかけは文字にすることで、
※それ以外は禁忌とされていました。
※他の伏字は、やはり口に出してはいけないような気がするからです。
※すいません。


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Part197
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