[煙に巻かれる人]

駅のホームでベンチに座りふと向かいのホームを見ると、全身を黒い煙りに包まれている人がいました。
胸から上が特に酷く顔などは丸っきりわかりません。
煙は腰あたりからだんだんと薄くなり丈の長いスカートから女性だとわかります。
以前にも煙をまとう人を目撃したことがあり、知人などで私が確認できる限り必ず悪い事が起きています。
しかしこの女性ほどの黒く濃い煙を見たのは初めてでした。
人のまばらな時間帯。向かいのホームはたしか快速待ちで嫌な予感。

怖くなり女性から遠ざかろうとした時、向かいの女性はフラフラとその場で大きく揺れはじめました。
それを見て私が女性を人ではない可能性について考えはじめた時でした。
いつの間にか女性の背後に人影が。若いサラリーマンらしき人が揺れに合わせ女性の肩辺りへコソコソと手を動かしている。
痴漢?などと思いましたが何か様子が変。すぐに女性の揺れが小さくなり、表情が確認出来るほどに煙も薄くなりました。
その直後に目的の電車が到着。すっきりしませんでしたが、急いでいたために乗車。
向かいのホームではサラリーマンがまだ何かを女性にしていましたが、すぐに発車したのでそれ以上はわかりませんでした。

二人とも生きている人間だったと思いますが、あの時を思い返す度に二人よりも向かいのホームそのものに対する奇妙な違和感を覚えます。


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Part197-2
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