[微妙な呪い]
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その日の夜、Tの家に泥棒が入った。
学校では「呪いのせいじゃない?」と噂されていたけど、
「何で呪いが盗みするんだよ。あほか」とTは余裕だった。
何でも大した被害はなかったらしい。
僕もこれはさすがに偶然だろと思っていた。

数日後、Tが車に撥ねられた。
Tの自転車はタイヤに潰されたが、Tにはかすり傷すらなかった。
これは呪いのせいだろと思ったけど・・
Tは「いや、完全に俺の不注意。曲がり角かっ飛ばしてったからな」
と笑っていた。
何でもその曲がり角では前々から何度もぶつかりそうになっていたとか。
「あれだな、ああいう時ってスローモーションに感じるって本当だな!ノロイのせいか」
などと冗談ぶっこいていた。

更に数日後、男友達数人で鬼ごっこをして遊んでいた時
Tが階段を踏み外し下まで転げ落ちた。
みんなその場で凍って「あわわ」になってしまった。
もしかして何者かに突き落とされたんじゃ・・と思った。
が、Tはピョンと立ち上がり
「危ねえ!階段の途中に犬の糞があった!踏まないようにしようとしたら落っこちたぜ!」
と爆笑。僕たちも安堵と面白さに爆笑。
Tは擦りむいただけで済んだ。

更に数日後、図工の時間、Tは彫刻刀で指を怪我した。
呪いだ!!とみんなが騒いだ。
B子が「T君の手を掴んでいる白い手が見えた」と言って怯えたが
Tは怪我した指を見せびらかせながらプゲラっと笑った。
勝手に手が動いたとかそんなんではなく
指を広げて置き、指の間をトントン彫刻刀を行き来させる度胸試しに失敗したからだった。
(エイリアン2でヒューマノイドがやってたやつです)
ただ、普段面白い人気のあった先生にこっぴどく怒られ凹んではいた。
その他にもTの身に色々な事故怪我はあったけど
呪いなのかと言われればどれも微妙だった。
学校ではTは呪われているがそれ以上に強い守護霊に守られていると噂された。
ただB子だけは「呪われている」と言い続けた。

ある日、遠足にて川辺の飯盒炊飯をやっていた。
「川には入るなよ」と先生は言っていたが
そう言われて守る者もいなく。
食後にはみんな川に入ってばしゃばしゃ遊んだ。
比較的穏やかな流れだったしそんなに深い場所もなかったので
先生も笑って見ていた。
しかし、事故が起きた。
B子が溺れたのだ。
川の底にあったガラスの破片を踏んでしまいパニクったそうだ。
助けたのはTだった。
「呪われているのは私かもしれない・・・」と泣きじゃくっていたが
Tが「心配すんな。呪いなんかないって。それに呪われるんなら俺だろ?お前は平気だよ」
と励まし安堵したようだった。
それ以来B子はオカルト的な事を言わなくなったしTの事も悪く言わなくなった。
というか絶対好きになってた。

ある日Tと二人で帰っている時に
「ねえ、T君は怖くないの?やっぱ呪いって嘘かな?」
と僕は聞いてみた。
Tはちょっとだけ真面目な顔になって
「誰にも言うなよ」と前置きをすると
「実はあのコックリさんやった日によ、夢の中に狐が出てきた。んでビビってさ
父ちゃんにお経唱えてもらって、近くのお稲荷さんに油揚げ持っていった。
だけどその後でも俺怪我とかしてんだろ。ってことは、呪いのせいなんかじゃなくて
ただ単に俺が不注意だってことじゃん。」
と言ってTは恥ずかしそうに笑った。
良く解らなかったが、何となく納得した。


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Part197-2
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