[係長の実況]

以前、勤めていた職場でのこと。

その職場は、隣にお寺があって、昔は会社の敷地もお墓だったとのこと。
幽霊がでるという噂もあった。

俺は零感だから、まったくわからなくて、気にもしていなかった。

そんなある日、朝礼が終わりみんなが自分の持ち場に離れた後、
俺はPCで調べ物をして、ちょっと遅れて1階の事務室を出て行った。

エレベーターホールでエレベーターが下りてくるのを待つ。
当然、周りには誰もいなかった。

そのとき、おれの眼の隅に誰かの靴がチラッと映った。
パタッという靴音も聞こえた。

ハッとして振り向いたが、誰もいなかった。

なんだ…気のせいか。
そう思ってエレベーターを待っていた。

すると、事務室から女性の係長が出てきて、俺と並んでエレベーターを
待ちだした。そのとき彼女が言ったんだ。
「キャッ、誰かそばにきた。」

お分かりかと思うが、その女性係長は霊感が強いことで知られていた。
俺は思わずゾッとしてしまい、私も見ましたと言えなかった。

エレベーターが降りてきた。

二人で乗り込むと係長が言った。
「あ、一緒に乗ってきた。今ここら辺に(と言って俺のすぐ隣を指す。)
なんかいるわよ。」

やめてくれ、頼むよ。
だが、俺はそれ以上なにも感じず、自分の席のある階でエレベーターを降りた。

たぶん見えない誰かは、女性係長についていったんだろう。
なかなか美人だったしな。

死ぬほどでなくてスマンが、本当の話だ。


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Part195
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