[犬]

夏祭りの帰りの夜、一人でとぼとぼ歩いてると
いつの間にか犬が自分の前を歩いている。
その時は特に気にすることも無く、(どっかの家の犬が抜け出してきてんのかな)
なんて思いながらそのまま歩き続けた。
そうしてるうち、持ってる袋の中に食べかけのたこ焼きが入ってることを思い出したので
冷めたたこ焼きは不味いしこいつにやるかと「おい」と前の犬に呼びかけた。
犬が振り向いた。
振り向いた犬には顔が無かった。
耳の辺りから前がばっさりと切り落とされている。
そいつがこちらにゆっくりと近づいてくる。
俺はたこ焼きを放り投げ、一目散に駆け出し、その日は近くの友人の家に泊めてもらった。
翌日見に行くと、たこ焼きは無くなっていた。
あいつが食ったのかはわからない。


次の話

Part196-2
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