[カブトムシと少年]

これは、聞いた話なんだけど・・・
ある少年が9月に季節はずれのカブト虫を学校帰りに見つけたんだって、
少年はそのカブト虫を家で飼うことに決めて、物置の奥の方から虫かごを持ち出し、その中に拾ってきたカブト虫を入れた。 
でも、どうも味気ない・・・
カブト虫は壁をよじ登ろうと、箱の端の方をガリガリかきむしるだけ、

少年は午前0時を過ぎていたにもかかわらず、カブト虫のために、枝を近くの林まで取りに行った。

林は薄暗くて物音ひとつしない・・・ 
それでも少年は「すぐ済むから・・・」と、林の中に入って行った、  
林の中には思ったとおり、たくさん枝が落ちていて、少年は手ごろの大きさのをいくつか拾って、すぐに帰ろうと立ち上がった。

その時、だ・・・ 

奥の方の木と木の間を、[白い何か]が横切った、
少年はビクンとしたが、あまりにも一瞬すぎたので少年は目を細め、それが何か見極めようとした。 
さっき見えたのはあの辺だったハズ!と、少年は林の奥から目を離さなかった。

だからだろうか、少年は自分の腕の中の変化に気付くのに時間がかかった。

少年はゾッとした。
ゴツゴツしていたハズの枝の感触が明らかに柔らかく、なめらかになっている。 
温度はさっきより格段に冷たくなっていて、気味が悪い・・・
少年は暗い林の奥で固定されていた目線を、
おそる、おそる、下にさげていった。・・・・そこには・・・

[手]。

少年は顔を青ざめた、自分が枝を抱えてると思っていた両手には
人間の[腕]が丸まる一本よこたわっているのだ。 
しかも、その腕は只そこでそうしてる訳でもなく、
なんと・・ 

うごいた、 
・・・人間の関節じゃあり得ない方向に指を曲げてまるで虫のようにカサカサと上の方まで上がろうとしてきた。
少年は恐怖と驚きで思わず尻もちをついた。すると、次の瞬間・・・

腕は枝だった、なにが起きたか分かるのだが覚えてない。
不思議な感覚だった、「夢をみていた、」と言ってしまうような・・・
少年は枝を抱え家に帰った、違和感はあった、でもそれを異常とは思わなかった。 
枝を虫かごに入れた、カブト虫は狂ったように暴れだした、 少年は虫かごにフタをして過重なぐらいガムテープで固定した。
なぜか?・・・分からない、そうするべきだと思った、と少年はのちに語っている。 

その日、少年は床についた。

そして次の日、
なにも起きず無事に朝を迎えられたことに、なぜか分からないが少年はホッとしていた。 
しかし、この後に少年の体は鳥肌でおおわれる。

少年は虫かごのガムテープを少しだけ破がした・・・すると、
・・・・明らかにカブト虫がつけたとは思えない、[5本のひっかき傷]が、虫かごの内側に深く刻まれていた。 
そして、カブト虫は、
死んでいた。・・・




・・・・ひきちぎりられたように。・・・


次の話

Part196-2
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