[修羅場]
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普通に考えればこっちは男二人、向こうは一人。やろうと思えば取り押さえることだってできる。
しかしそのあまりの光景にAは足がガタガタ震え、Bにいたっては道の上にヘタりこんでしまっていた。
「…なに見てんだよ…」
男は立ち上がり、こちらに向かって歩きはじめた。段々と歩みは速くなり、まさにAに掴みかからんとしたその時。
Bが「あっ」と声をあげた。つられて男もAもBの目線の先を振り返る。
女が、上半身だけ、起き上がっていた。そして顔を空に向けると
「あああぁぁううがぁぁぁぃぃああああぅぅぅぅあああああ!!!」
と、叫んだ。吠える、という方が適切だったかもしれない。
「あがぁぁうぁぁいぃぃぃ………」
最後は消え入るような声になると、また「ずちゃっ」という音と共に倒れた。
それを聞いた男はその場に突っ伏し、「許してくれ、許してくれ、許してくれ…」と言いながら失禁し、ダラダラと泣きはじめた。
二人はこれ幸いとゆっくりと男から距離を取り、携帯で警察を呼んだ。パトカーがくるのにはものの5分とかからなかった。
一部始終を見ていた二人も当然のように署に連れていかれた。部屋でしばらく休まされていると、一人の警察官が部屋に入ってきた。
「大変だったねえ」
「ええ」
「痴情のもつれだったようだ。犯人の男も自分が何をしたのかよく覚えていないらしい」
「本当に大変でしたよ。あの女の人が大声をあげてくれなければ私達もどうなったことか」
「大声?そりゃおかしいな」
「え?」
「被害者は、最初の車の一撃で即死状態だったよ」
「そんな」
「どういう当たり方をしたのからはこれから調べるが、最初の衝突で頭の半分は原形もなく損壊してる」
「…」
「まあ、ハネた後も随分と酷いことをしたようだけどいくら自分を見失っていたとはいえ人の手だけでああはならないよ」
そんな…。じゃあ街灯にうつしだされたあの顔は?そしてあの声は…?!
二人は結局コンビニに行くこともなく、部屋に戻って朝まで二人でよりそって寝たそうだ。