[開かずの間]

開かずの間

って結構ある話だけど、俺の大学周辺にもあった。
学部の後輩Aが住んでいた下宿は、風呂や便所は共同、廊下を挟んで両側に部屋があるタイプで
古くからのまさに「下宿」って感じだった。
南側に4部屋、北側に4部屋あるはずなのに、北側の一番奥の部屋は
開きドアが塗り込められていて開けることができないようになっている。
後輩Aに聞くと住民は、なるほど7名だそうだ。
教育学部と文学部に便利な門までは徒歩3分ぐらい。
やや築古だが定食屋もコンビニも近くにあって至便な場所。
毎年空き待ちで、卒業する人が次の入居者に後輩をねじ込んで引継ぐ程の人気物件なのに
「なんで、あの部屋だけ誰も住まないの?」「大家はアホか?」と、知ってる人は誰もが言っていた。

いつものように飲んでる時にこの話になって、誰かが後輩Aに「そういや、なんで?」と聞いた。
いい感じで酔って赤い顔だった後輩Aの顔色がみるみる蒼白になって
A「いや・・・そのっ・・・(ガクブル)」 他一同「どっ、どうした?・・・なんかあるんか!?」
Aが言うには、数年前にその部屋で何かが起こってそれ以来、あの部屋は使われていない。
なのに夜中に物音や苦しそうなうめき声が聞こえ、たまにカタカタ振動が起こるとのこと。
「怖ぇ〜な〜、でも隣や向かいの部屋の人は平気なのか?」と尋ねると、
隣の部屋は大家さんの関係者がずーっと住んでいて、
「供養してる」とか「ヘンな噂が広まらないようにしている」とのこと。
向かいの南側の部屋は、代々ある体育会系が引継いでいるらしい。
みんな「そんな怖ぇーとこ引っ越せよ」と勧めたが、便利の良さと大家さんの人柄の良さ
何より家賃が相場ではありえないぐらい格安なので「怖い」以外、文句のつけようがない物件。

友人Bが「私の友人でマジで霊感が強い女の子がいる。この子に見てもらおう」と言い出した。
「やめとけや・・」という話にはならずに「よっしゃ、今から呼べ!」ということになった。
この女の子Cさんは、旧国でいう一宮の神主の係累で、卑弥呼の再来?と呼ばれるぐらい
霊感が強いことで有名な人らしい。これまでも「行っちゃダメ!」とか突然言い出すこともあり
あとで聞いてみると、そこは火災で死者が出たとか・・・そういう感じの人。
卑弥呼?とは言っても、そこは現代っ子のCさんは軽く誘いに乗って来てくれた。
「今日は遅いから、明日にでも行こうか。とりあえず今日は飲もう!」ということに。

大いに飲んで酔い潰れたCさんは俺んちに泊まって・・・ま、本題じゃないから(略)

翌日、昼頃まで寝て爽やかな目覚めのCさん他一同、現地到着。
Cさんが廊下を行ったり来たりしながら「何も感じないよ」「全然平気」
一同「あのドアの前に行ってみてよ」 Cさん「いや〜、何もないよココw」
期待外れの俺達。同時に、わざわざ来てくれたC子さんに申し訳ない。
ここで誰かが「窓側に回って中を覗けばいいやんか!」と言い出した。
「そやな!」 みんなあっさりと賛成。(何故、今まで誰も思いつかなかったのだろうw)
同時に「Cさんの霊感敗れたり〜」を期待していたのかもしれない。
後輩Aだけは「何かあったらどうするんですか〜(涙)」「それに北側は危ないですよぉ・・・」
そういや北側の窓の外は、ちょっとした切り立った崖になっている。
「A!おまえが登って行けや、コラ!!」
先輩後輩の上下関係は絶対なのだ。

安全な場所で見守る我々の期待に応え、Aは北側奥の部屋の窓際への単独登頂に成功した。
一同「どうや!何が見える?」
A「・・・・」 一同「はっきり言わんか!ボケェー!」 Aは唇に人差し指を当てて「シーッ」の合図。
ちょっと不安と期待が入り混じる。「早く戻って来い、コラ!」
A無事に帰還。もの凄く暗い顔・・・次の瞬間大笑いしだした。
「うむむ〜狂ったか・・・」と誰もが思った。
やはり我々は取り返しのつかないことをやってしまったのかと。

落ち着きを取り戻したAが静かに語りだした。
手前の部屋と開かずの間の壁が取り払われて、広いひと部屋となっていた。
中では例の大家さんの関係者が、大画面TVでエロビデオを見ながら真っ裸でシコシコ中。
夜中に聞こえる苦しそうなうめき声は、このおっさんのイキ声とエロビデオの音声。
カタカタ振動は、その激しいシゴキによるものであろう。
一同唖然・・・
その後我々が知った真相は、大家が関係者用に壁をぶち抜いて広いひと部屋にしてあげたこと。
関係者さんは、今のニートの先駆けみたいな人であまり部屋から出ず、顔を会わせる人もなく
ことの真相を知る人が少なくなり「開かずの間」伝説となったようです。

まあ、長々と書きましたが、我々が得た最大の成果は
Cさんの霊感の確かさが証明されたことと、Cさんと飲み友達になれたことです。


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Part195
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