[首塚]

すみません。携帯からなので読み辛いです。

私の地元には首塚があります。盛りあがった土の上に縦長の岩が突き刺さっているだけという非常に地味な代物です。
誰の首かと訊くと鬼の首だそうで、いわゆる霊感持ちにはそれが見えるそうです。他人事のように書きましたが、実は私も首を見たことがあります。
祖母と伯母が親族内では見える人で、私はよく二人に首の話をおねだりしたものです。
祖母も伯母も首の話はタブーのようではなく、あんたにも見れたら良いねという感じで逆に縁起物のように話しをしてくれました。

二人によれば首は全長約1mほどの大きさで岩の裏に隠れるように鎮座している。それは影絵のように形はよくわかるのですが、表情や細部は濃い影が落ち伺い知る事ができません。
しかし上部に二つ小さな角らしきでっぱりがあるために鬼の首に見えるそうです。
またそれ自体何をするわけでもなくただ石の側に佇んでいるのが見えるだけ。常に見れるわけではなく。
雨の日、特に降る直前に見える事が多く。ある種の天気予報として重宝していたそうです。
当時、漫画のうしおととらが大好きだった私は餓眠様(巨大な生首)を想像して震えていましたが、段々とこの周辺を守っている良い妖怪へとイメージを変え、一目で良いからこの目で首を見てみたいと思うようになっていました。

そんなある夏の日、私は遊びに行っていた友達と別れて帰り道を一人で歩いていました。
遠くの方にあの首塚が見えます。今日は見れるかもと思い首塚を凝視しながら歩いていました。
少し歩いた所である違和感を覚えました。首塚の後ろを寄り添うように黒いモノが見えます。
鬼の首だ!確信した私は勢い良く走り出していました。夕方とはいえまだまだ明るい時間帯で全く怖くありません。
むしろ感動の再会(初めてですが)のように興奮して走りました。しかし遠くからは伯母達の話の通り黒い大きな首に見えたのですが、近付くにつれその首を覆っていた影が薄くなっていきます。
つまり伯母達には陰になり決して見ることのなかった首の細部がうっすらと見えるのです。

だいぶ近付き首の全体を把握した時、汗と体温が恐怖で一瞬に引いていったのを覚えています。
これは鬼の首ではない。これは人の形だ。大きめの男の人が歪な三角座りをしている形だと気付きました。
縄か鎖で強制されているんだと思います。強く縛り過ぎて変形した体はシルエットのみなら大きな生首に見えたのです。
足首の間に顔が挟まり頭の上には強く結んだ両手、突出した両膝が角の部位に見えたのでした。
恐怖で固まった足をどうにか動かして友達の家に戻りました。なんとか親に迎えに来てもらい、首塚を横切らない別ルートで帰りました。
その夜はひどい土砂降りだったのを覚えています。あの日以来首塚には近づいていません。


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