[ちゃんちゃんこじじい]

俺が小学校1・2年生の時の話。
俺の住んでる家の近くに結構格式の高いお寺がある。
大●●寺っていうんだけど。
そこは結構近所の子供の遊び場の一つになってた。
5月のの初めころに定例の祭りが催される場所でもある。

不思議な体験をしたのはその定例の祭りが終わって1月以上たったある日。
梅雨に入りかけたどんよりした天気の日だったと思う。
俺と兄貴と兄貴の友達でいつものように家の外で遊んでいた。
そっからその寺の方まで足を延ばすのは別に変ったことじゃない。
鬼ごっこもどきの遊ぶをしながらその寺(すごい広い)の敷地へ突入したわけだ。

その日はその寺の敷地に入った瞬間、なんとなく違う雰囲気を感じた。
必要以上に空気が重いというかなんというか。
後から聞いたら兄貴もその友達もそんな風に感じたんだと。
で、子供だから「ワーワー」いいながら追いかけっこをしてた。

で、ふと三人とも動きが止まった。
寺の敷地内にある小さなお堂に茶色いちゃんちゃんこを着たおじいさんが
座ってる。寺の敷地内で遊ぶのはあまり良くない事だってわかってたし、
大人がいたら急に勢いを無くしてしまうのが子供の性。

テンションの低くなる状況で、三人とも目くばせで
「どうしようか・・・」的な会話をしていた。

たぶん俺の兄貴だったと思う。
「あ」
っていったんだよね。
んでその時小さなお堂を見ていたのはたぶん兄貴だけだったと思う。
俺と兄貴の友だちはそのお堂を背にしてた。
んで、フッと振り返ったらお堂にいた茶色いちゃんちゃんこを着たおじいさんが
ものすごい速さで動いて視界から消えたわけよ。
視界でいうと正面にいたもんが右方向にスーーーッと消えた。

三人とも一瞬あんぐりしていたけど、
すぐに
「ワーーーーーーーーーーっ!」
って悲鳴と絶叫が入り混じったものを上げながら家に全速力で走った。

三人とも家まで全速力で走った。
途中で雷鳴りまくりの夕立ちになって体がびしょ濡れになったけど
一心不乱で俺の家(正確には祖父母の家)に走った。

家に帰って見たことを祖父に言うと、祖父がどこからともなく
しばき棒のような物をもってきて、三人とも肩をビシバシ叩かれた。
ちなみに祖父は霊能力者ではない。ただ、阿含宗を少しかじっていたらしい。
まあ要するに霊もくそもないわけだが、一応除霊っぽいことをやってくれた。
で、結構真剣に怒りながら、「そういうモンは見たらアカン」と一言。

そんなこんなも忘れたその年の夏の終わり頃。
学校から帰ると祖父が一枚の写真を見せてくれた。
町内会の記念写真で一週間ほど前にとったものらしい。
で、祖父が写真の端っこに写ってる人物を指さして
「これか?」
聞くので
「うん」
と答えると、すぐにその写真を持って一緒にその寺に向かった。
住職と祖父が少し話し込んだ後、祖父は少し疲れたような顔で戻ってきた。
「もうええから」
とだけいった。その写真はそれ以後見たことはない。


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Part194
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