[マネキン]

友人と湖の近くのペンションに泊まった時の話。
四時間の車移動を終え、ようやくペンションに到着して中に入ったところ、暖炉脇で誰かが倒れてるのが見えた。
慌て駆け寄るとなんてことはない、マネキンがうつ伏せで置いてあるだけだった。
前の客のイタズラか。とにかく気持ち悪いので、マネキンは倉庫へ移動。
とりあえず友人は夕食の買い出しに向かうというが、俺はすごく眠かったので一休みすることにした。マネキンが気になったが。

よっぽど疲れていたのか、横になるとすぐに眠りにおちた。
夢を見た。
自分は湖にいて溺れている。もがくたびに水が気管支に入る。岸があんなに遠くに見える。
夢とは思えないぐらいの苦しさ。もう駄目だと思ったところで目が覚めた。

悲鳴を上げそうになった。
倉庫にしまったはずのマネキンが俺の上に乗っていたんだ。ゴロンと転がるマネキン。
開かれた目は無表情に宙を見つめている。

後のことはあまり覚えていない。とにかく夢中で外に飛び出し、友人の車が帰ってくるまで外で震えていた。
友人が帰ってきたら事情を話し、速攻で宿泊先を変更。

もう三年も前の話だ。


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Part194
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