[対向車]

僕の親は霊感が強いため、しばしば心霊体験をするそうです。
その中から親から聞いた話をします。

ある日、郊外のショッピングモールへ出掛けたその帰り道でのこと。
主要な道路は渋滞していたため、旧道の山道を通ることにした。
途中に、急な角度で曲がる道幅が狭くなっているカーブにさしかかった。
カーブの中にあるミラーには青い色の対向車が映っていた。
親はカーブの手前で車を停め、対向車が通過するのを待った。
だが、対向車は進んでくる気配がない。
向こうも譲っているのか、ただ停車しているのか
と思い、親は車を進めカーブへ入った。
そしてカーブを曲がり反対側の道路へ出た時、
ミラーに映っていたはずの対向車が姿を消していたのだ。
バックをして見えない所へ行ったのか。
しかしカーブの先は登り坂になっているやや長めの
直線道路であるのでそれには無理がある。
もしかして対向車ではなく前方を走る車だったか?
いや、ヘッドランプは確かに前を向いてミラーに映っていた。
仮に前進して走っていったにしても、停車している状態から
登り坂を走り、見えなくなるのは考えづらかった。

親は不思議に思いながらもひょっとしたら、
やっぱり前方を走る車だったのかもと思い、
その青い車を見つけようと車を飛ばして山道を走った。
途中に分かれ道はなく、まっすぐ進んで見つけた車は
白のクラウンだった。親はクラウンの運転手に尋ねてみた。
青い車が後ろから来なかったか、もしくはすれ違ったかと。
クラウンの運転手は答えた。
青い車に追い越されてもいないし、すれ違っても、それ以前に見てもいない、と。

あのミラーに移っていた青い車は何だったのだろうかと思い、
後日職場でその日の出来事を話してみると、
部下から聞くには、数年前にDQNが山道を飛ばして走った揚句、
件のカーブを曲がりきれず崖下に落下し、運転手も同乗者も
車外にほうり出され・・・という悲惨な事故があったという。


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Part194
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