[視姦]

私的に洒落にならない話を投下

大阪の心霊スポット(よく雑誌に取り上げられている河内長野の某トンネル)
に3日前一人で行ってきた
名前は出していないが恐らく大多数の人が気づいているハズ
そのトンネルの中で
・中央で車を止め、エンジンをストップ
・クラクションを3回鳴らす
という手順をふむと何かが起こると言われている
実際に行ってみたら、とてつもなく怖かった
言葉で表現できない寒気。トンネルが魔物の口のようだった
その現実と隔離されたような世界に俺は車を走らせた
中は暗くて、少し明かりが灯っていたが、心ともなかったのでライトをつけて走った
こういうところでラジオやCDなどをつけるとたいてい声が流れたりするので、車内は無音
入る前は歌っていたのだが、入ってみるとそんな余裕など微塵も無くなった
中央付近に到着し、念のため車を降りて周囲を徘徊
ポチャン、ポチャンという水のしたたり落ちる音がトンネル内を支配していた
ポチャンポチャンザッザポチャンザッザポチャンポチャン・・・
という風に俺の足音と水音がトンネルに響き渡る
不意に背中の中に冷たい感触。驚いて後ろを振り返る。誰もいない
シャツの中の感触からして、振ってくる水が背中の中に入ってきたみたいだった
とりあえず車の中に戻って深呼吸。心を落ち着けて、クラクションを・・・鳴らした
プーップーップーッ
トンネル内をクラクションの音がこだまする
ジトーっとした車内、俺の脂汗と冷や汗はとどまることを知らなかった

何分しただろうか、俺は車の中で寝ていたらしい
あわててエンジンをつけて時計を確認すると、午前1時
トンネルに入ってからもうすでに2時間経過していた
即座に自分の家に車を引き返した。別に何もなかった

この話には続きがある

2日前、そのトンネルで肝試しをしたという友人に会った
その友人曰く、あのトンネルは洒落にならないという
関西弁で喋ったのだが、分かりにくい人もいるだろうから標準語に変換する
「昨日行ってきたが、何もなかったぜ?」
「いや、ならいいんだよ。何もないに越したことはない、越したことはな・・・」
思わせぶりな発言をして、友人は黙り込んだ
俺はその空気を紛らわそうとして、明るく装ってトンネルの話をしてしまった。
今思うとあの発言はその場の空気にそぐわなかった。何故俺はあの話をしてしまったのか
そしてあの話をしなければ何もなかったのではないか、と俺は思ってしまう
「あのトンネルの中、確かに怖かったよな。薄暗くて、水音ばっかでさ」
「水音・・・?」
そういって友人は訝しそうに俺を見た
「冗談言うなよ、あのトンネルの中は真っ暗で水の音もまったくしなかったじゃないか」
「え?何だって?」
何度確認しても二人の意見は食い違った。俺の体験ではトンネル内は少しの明かりと水音で支配されていた
それに対し、友人の体験では数センチ先も見えず、静寂だけがトンネルを支配していた、と
だが行ったトンネルは確かに同じだった。なら俺は一体どこへ行ったんだ?
家に帰って早速車を点検。あのトンネルの中で走ったんだから、何か憑いてそうだった
でも、何も居なかった。友人の話では、後部座席に赤ん坊とか、手形とか、そういうものがあるらしいのだが
部屋に戻ってTVをつける。が、トンネルのことが気になって集中できない
とりあえず横になろうと、布団をしいていた時だ
・・・誰かに見られている
そう確信した。痛いほど視線を感じる。殺気や憎しみを感じない、無表情な視線
それをビシビシと受けて、俺は視線を感じる先―押入れを見た
数センチ開いた先から何かがこちらを見ている。この部屋でそういう体験をしたのは、過去5年で最初だ
スススッと横に移動する。目もこちらを追ってくる
俺は意を決して押入れの前まで走って―開けた

続く