[紛れ込む]

電車の整備士をしている弟の話。
「前に飛び込み自殺のあった車両を点検してた時さぁ。
お客が乗る箱の部分を吊り上げて、車台や車輪の部分を見てたら、そばにいた後輩が
へんな声あげて腰抜かしちゃってさ。
どうしたんだって聞いたら、人間の手首から先あたりが原形のまままるまる部品の中
にあってさ」
そういうの、よくあるの、と聞くと
「わりとあるよ。見つかったのがどこの部分かわかる様なのは警察に届けないといけ
ないんだけど。
どこの部分かわからない様な小さいのは車庫からちょっと離れたとこにそういうのを
埋める場所があってさ。
そこに埋めていちおう線香あげるんだ」
お前もそういうのを見つけた時があるの、と聞いたら
「あるよ。部品の中に髪の毛が巻き付いててさぁ。で、何かの皮もついてるの。頭の
皮なんだろな。
でも一番気持ち悪かったのは先輩が見つけたやつでさ。
部品の中に男ものの革靴が入り込んでてさ。先輩がそれ取ったら思ったより重いから、
あれ?って見たら。
靴の中に中身が入ってたんだ」

弟曰く、慣れる事はないが、やはり少々のものを見ても驚かない様にはなるらしい。


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