[死の三町目]
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高校を卒業すると僕は上京して東京の大学へ、M君は地元の国立大学へと進学しました。
上京してからM君を含め地元の仲間との連絡は次第に減り、一年を過ぎる頃には殆ど地元の友達と連絡はしなくなりました。
ちょうどその頃でしょうか、M君から電話がかかってきたのは。
久しぶりに話す幼なじみとの会話は盛り上がり、1時間ほど話をして、今度の休みに実家に帰るから飲みに行こうと約束をして電話を切りました。

その数日後、今度は高校時代の別の友人から電話がありました。
「Mが亡くなっちゃったんだって。」
静かに、悲しそうに彼はそう言いました。

フェンスを乗り越えて線路内に侵入、そのまま電車にひかれてしまったんだそうです。
買い物帰りだったんでしょう、M君の乗り越えたフェンスの外側にはその日M君の買った洋服とCDが置いてあったそうです。
状況からM君は突発的な自殺をした、そうゆうことになりました。

なんだか騙されているような気分でした。ついこの間電話で話したばかりなのに…

次の休日、僕は実家に戻りM君のお葬式に参列しました。
遺体の損傷が激しかったんでしょう、亡くなったM君の顔を見ることは出来ませんでした。
飾られていた写真はM君の高校時代のもので、それを見て初めて僕はM君の死と、友人を失った悲しみを実感しました。

お葬式の時、高校時代からのM君の彼女と話をしました。
M君の死から数日過ぎていましたが、彼女はM君の死を受け入れていたんでしょう、お葬式の間、彼女は涙を見せることはありませんでした。

彼女が言うに、M君は亡くなる前、特に何かを悩んでいるとか、人間関係が上手くいっていないとか、そんなことは全くなかったそうです。
「Mが自殺したなんて思えない。」
彼女はそう言っていました。
M君は自殺するような奴じゃない、そのことは付き合いの長い僕にもわかっていました。
ただ、僕に電話をかけてきた数日前、M君は自分が死ぬことがわかっていたんじゃないかな?

小学校の時、一度だけ僕はM君の家に遊びに行ったことがあるんです。
子供達から死の三丁目と呼ばれる場所にあるM君の家。
夕方の帰り道、夕日に照らされた灰色とオレンジ色の三丁目の街並みが僕にはとても不気味に、嫌な感じに見えて、早くこの場を離れたい、そう思って急いで家に帰ったのを覚えています。

小学三年生の時隣の席だった霊感少女Aちゃん。
彼女曰わく、
「三丁目には嫌なモノが集まっている。そのせいで死んだ人の霊があの場所にいると嫌なモノになってしまう。そしてまた嫌なことが起こる。」

きっとM君はおばあさんに連れて行かれてしまったんだ。
そう考えるのはあまりに強引なこじつけかも。
でも、あの日の、三丁目の夕日を思い出す度に僕はそう思えて仕方がないのです。


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