[インターホン]
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その日は帰りの遅い父も珍しく一緒に夕飯を取り、夜の8時過ぎに家族全員が揃っていました。
食後ののんびりした空間で思い思いに時間を過ごしていました。
それを引き裂くように、インターホンが「ピンポーン」と鳴りました。
さっと家族で顔を見合わせ、「誰が出る?」とアイコンタクトをしていると
もう一度「ピンポーン」と鳴りました。

「あぁ、これは悪戯じゃなくて、本当にお客さんが来てるんだ。」

待たせるのも悪いと母が玄関に向かおうとすると、

ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン

一瞬にして家族全員が固まりました。
狂ったようにインターポンが鳴りっぱなしに鳴り出したのです。
気の小さい兄は小さく悲鳴を上げました。
母も動けなくなり、ただただインターホンの音だけが鳴り続けていました。

家族の誰もが黙ったまま、ただただインターポンの音を聞いていました。
どれくらい経ったでしょうか、父とジィちゃんが玄関に向かいました。
母と私と兄妹もその後に続きました。
未だにインターホンは鳴り続けています。
玄関のドアの先には、やはり誰も居ません。
インターホンのボタンの前にも、誰も居ません。
それでも音はずっと鳴りっぱなしなのです。

父とジィちゃんが、インターホンの前に立ち、
恐る恐るボタンに手を伸ばしました。
玄関の中でその様子を伺っている私達にも緊張が走ります。
父とジィちゃんが、「うわっ」と声を上げました。
何かあったのかと玄関から身を乗り出すと


「アリが巣食っとるわー」

え?アリ?
どうやら小さなアリの集団がインターホンの中に入り込み、
配線をイカレさせてしまったようです。
どこどうやれば、あんなボタンを連打したように音が鳴るのでしょうか。
その後、鳴り続けているイカレたインターホンは、無理やり配線を切って音を止めました。
やっと静かになったインターホンに家族でため息をつき、
数年たった今でも時々話題に上る出来事になりました。

長いのにこんなオチで申し訳ないです。


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