[SOSやめてください]
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旧家庭科の窓の向こう、薄暗いもののはっきり見える窓の向こう、
SOSがいた。
大きな茶色い顔で、角張った肩。不思議そうなキョロキョロとした黒い目で
SOSはこちらを見ていた。
泣き出す生徒、叫びをあげる生徒、興奮して「くそう!おれがころしにいったる!!」と
旧校舎に向かって駆け出す生徒。
しばらくして皆は口々に叫び始めた。「SOSやめてください!!SOSやめてください!!」

SOS怪談にはあるルールがあり、「SOSと出会ったら”SOSやめてください”と叫びつづけないと、SOSに殺される」
というものだ。

皆は半ば恐慌状態でSOSに向かって「SOSやめて下さい!!」と叫びつづける。俺も大声で叫びつづける。
SOSは茶色い大きな大きな顔をガラスに貼り付けるようにして、こちらを眺めていた。
後にも先にも、俺はああいう生き物を他でみたことがないし、何かのみ間違えだったとは全く思わない。
先ほど駆け出した生徒たちが旧校舎の入り口のドアを叩いているのが見えた。
「SOSでてこいや!!おれがころしたる!!でてこいや!!」

2008年の今、俺は切実な思いでこの話をここに書き込みたい。
1984年、大阪千里丘〇〇第二小学校であの時期、あの日、
SOSを見たあの生徒たちの誰かがこの書き込みを見てくれる事を真剣に願う。
あれは一体何だったと思う?あの日、あの後どうなった?あれ以来SOSはまた現れたりしたのかな?

子供特有の思い込みや見間違いなんかじゃない記憶と事実を、俺は切実な思いでここに書き込む。
今も残るあの天井の足跡、あのガラスの向こうの大きな茶色い顔、俺たちを興味深そうに眺めていたあの物静かな黒い目。
あいつは一体なんなのか、まだそこにいるのか、
夏に近くなる暑い日曜日の朝になるといつも、思い立ってあそこに行きたくなる衝動を未だに感じる。
あの日駆け出した生徒たちの様に、あそこに走っていって扉を開け、あいつを捕まえて「SOSを捕まえた!!本当にいた!!」と
叫びたい衝動に強く強く駆られます。

1984年のあの場所にいた俺と同じ、当時の子供に
この書き込みを伝えたい。
もしそういう人がいたら、この言葉を俺が紛れもなく俺があそこにいたという証拠として送る。
「〇〇〇〇のタイヤ」

物語めいた言い回しや最後の謎かけめいた書き込み、ウザかったらすいません、
でも俺が体験した出来事です。


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