[最後の声]

俺さ、ガキの頃パノラマエクスプレスに乗ったんだ。
電車が二階建てで、一階部分は客席で前面ガラス張りなので、運転手気分が味わえる電車。
もうさー、小学校に入ったばかりの歳だから、嬉しくって、嬉しくって、かじりつきで景色見てたんだよ。

そしたら、踏切で横から女の人が電車に飛び込んできた。
俺の目の前で飛び込んできたんだよ。一瞬だったけど、目と目があった。
電車は急停止したけど、間に合わなかった。
その時、女の人は俺を見て「あんたも」と言った瞬間肉塊に変わった。
首がもげた。腕も飛んだ。
電車の前面の硝子は、血飛沫で赤黒く変わった。
電車はしばらく止まって、次の駅まで血飛沫で赤黒く染まったまま走った。俺は怖くなって、後ろの車両に移動した。
次の駅で別の車両に乗り換えさせられた。

今でも思い出すんだけど、「あんたも」と言う声は、聞こえないハズなんだよな。でも、今でもその時の声が鮮明に思い出す。
あの声は本当に聞こえたんだろうか?


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