[憑いてきた女の子]
前頁

ミシリ…、ミシリ…
とゆっくり階段を登ってくるような足音

2階には俺しかすんでないから他の住人ではないし、
もちろんこんな時間にアポなしで訪ねてくる知り合いもいない。

この子に引寄せられてきたのかなぁと思ってたら、

次第に嗚咽する女の泣き声と
押し殺したような男の声が聞こえだした。

女の子を見ると枕元に座ったまま瞬きもせずに眼を見開いて
涙を流しながらジッと俺を見ている。

なんかヤバいの憑れて来てしまったかもと思った時
背中にゾクッと悪寒が走る。
誰かに見られているような感じがする。
視線を感じる先を見ると、いつの間にか少し開いた台所の窓から複数の眼が俺を見つめている。

俺は心臓を鷲掴みされたような恐怖で、布団の中で動けずにいた。

暫くすると カチャ…
カチャ…っとノブを回す音がして
玄関のドアがスーッと開いていった。

え?カギは?
と思いながら茫然とそれを眺めていたが、
危険を感じた俺は
『うわぁーっっ!』と恐怖を振り払うように叫び声をあげながら布団を跳ねのけ逃げようとベランダに走った。

その瞬間女の叫び声と男の怒号が入り乱れ、
俺は何かに弾かれ壁に激突し、物凄い力で床に押し付けられた。
身動きどころか息をするのも困難な状態。

恐怖でパニックになっている俺の耳に再び響き渡る女の叫び声と男の怒号!

『アスカちゃん!』

『ママー!』

『またお前かぁっ!』

俺は何がなんだかわからなかった。



なんということだ!
俺が幽霊だと思っていた女の子は、まだ生きている女の子だったんだ!

俺が危険をかえりみずに憑れて帰った子供は俺を陥れる罠だったんだ!!


って事の成り行きを、弁護士に必死に説明して
これは不可抗力であるってこと訴えたが全く信じてくれなかった。

俺が被害者だってことを信じない弁護士がこの世の中にいることが洒落にならん!

お前等なら俺を信じてくれるよな!?


次の話

Part191menu
top